2.ローズウォーターで肌ケア
「シュゼットー! 待ってー!」
丘陵地にあるフレゥールの町の目抜き通りを歩いていると、後ろから名前を呼ぶ声が聞こえてきた。足を止めて振り返ると、三つ年上の友人のバルバラが坂を駆け足で下ってくるのが見える。シュゼットは手を振って答え、足元の飼い犬ブロンは「キャンッ」とかわいらしく鳴いて答えた。
バルバラは飛びつくようにガバッとシュゼットに抱き着いた。体がグラーっと後ろに倒れそうになりながら、シュゼットはバルバラの背中をポンポン叩いた。
「シュゼット! この前はありがとう!」
「どういたしまして。それで、うまくいった?」
バルバラは首を縦にブンブン振った。それに合わせて、ブロンのクリーム色のシッポもブンブン揺れる。
「すっごく! エタンって肌がきれいな人が好きでしょう。もうイチコロだったわ。絶対にシュゼットのおかげよ!」
「すごいのはローズウォーターだよ。うまくいって良かった」
ローズウォーターとは、バラの花びらをウォッカに六日間浸けて作る化粧水だ。香水としても使うことができるローズウォーターは、香りが良いのはもちろん、肌のきめを細かくし、肌をきれいにする作用を持っている。万年肌荒れに悩まされていたバルバラは、半年前からローズウォーターを試し、今では人生で最も肌がきれいになれたそうだ。
「つまりはシュゼットのおかげってことじゃない! シュゼットのおかげで、好きな人とお付き合いできることになったんだから!」
バルバラはシュゼットの手を取り、その場でクルクルと回った。ブロンはキャンキャン吠えながら一緒になってクルクルと回る。
「あはは、わかったよ。ありがとうね、バルバラ」
「こちらこそありがとう!」
バルバラは「あっ」と言って、回っていた足を止めた。ブロンもキキッと足を止める。
「今更だけど、買い物の途中にごめんね。家遠いのに。アンリエッタさんが心配するわね」
「大丈夫だよ。むしろ良い報告が聞けて良かった。おばあちゃんも喜ぶよ」
「なら良いけど。アンリエッタさんによろしくね」
「ブロンも喜んでくれてありがとう」と言い、バルバラはブロンのフワフワした小さな体をワシャワシャとなでた。
ご機嫌なバルバラと別れると、シュゼットは目抜き通りを抜けて、村の外れに続く細道を歩き出した。この辺りの道は完璧には舗装されておらず、デコボコしていて少し歩きにくい。それでももし靴擦れをしたら、ラベンダーの精油が入ったミツロウクリームを塗ればすぐに良くなる。シュゼットは勇んで足を進めた。その時だった。
「キャンッ!」
ブロンが弾かれたように吠えた。
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