第14話 【事変書】
酒呑童子が倒されたことにより、閻魔街から悪質な妖怪たちは消え、また平和な日常が訪れる。
「ふぁぁぁ、ねみ…。」
ヘビの舌を出しながらあくびをする。
傷口もしっかり塞がり、様態も安定した大蛇は、顔に一つの絆創膏を貼り付けている。
ふと、絆創膏に触れるとピリっと電撃が走るような痛みがくる。
「いてっ。まだ、8時か…。寝る時間だな。」
そう言って、布団の中に潜り込むとドアを思いっきり開ける音に飛び起きた。
バンッという盛大な音と共に「おはようございます!」というやかましいガキンチョの
声が聞こえてくる。
「うるっせぇな、おい。食うぞ!!」
「すっかり、元気になりましたね!安心しました!そんなことより、お給料もらいましたよ!!!あの、雑貨屋さんに行って『事変書』買いに行きましょう!!!」
念願の、給料日に舞い上がる高良についていけない大蛇は、渋々布団から出て外に出る支度をする。
部屋着を脱いだ大蛇の体は、筋肉がつきすぎず、つかなすぎずといった、華奢なスタイルだ。だが、それよりも傷跡だらけの体に高良は驚いた。
「沢山、傷がついてますね。」
「今までどんだけ戦ってきたと思ってんだ。」
そうこうしているうちに、大蛇が着替え終わり、二人は雑貨屋へと向かった。
「そういえば、大蛇さんってなんで俺に話しかけてくれたんですか?大蛇さんの性格上子供にはあまり話しかけなさそうなイメージです。」
実際にそうだ。大蛇は、子供が苦手だ。すぐ泣くかららしい。
「あぁ、あん時は閻魔街の見回りの仕事を頼まれてたからな。それに、子ども一人で出歩くのは危険だと思ったからだ。閻魔街と言えど九尾みたいに厄介な妖怪もいるからな。」
大蛇は高良と出会う前は、閻魔と関わることはすくなく、どちらかというと餓者髑髏の下で働いていた。
閻魔街の見回り、貿易、戦闘などを主に行っていた。
「着いたぞ。」
さっそく雑貨屋の中に入ると、今まで一度も見たことがない不思議な品々が置いてある。
水円と書かれた魔道具や、呪と書かれた御札など禍々しい物もある。
高良が興奮して魔道具を見ている中、大蛇は事変書を探す。
「おい、事変書あったぞ。」
「え、もう見つけちゃったんですか!!?まだ見たいの沢山あるのに…。」
「また今度な。」と言いながら会計をする。
事変書を差し出すと、目を開いてるのか開いていないのかよく分からない眼鏡をかけたおじいさんが受け取った。
「三銭だよ。」
高良が、給料袋から三銭を取り出しておじいさんに渡す。
「毎度あり。」という声をあとに、高良たちは店を出た。
部屋に戻り、早速事変書を机の上に置く。
椅子に座りペンを持って目の前の紙と向き合う。
事変書は、いたって普通の封筒だった。
裏面を見てみると宛先と書かれており、現世・あの世・天国・地獄と選択肢が書かれている。
この場合、高良は現世に丸をつけるのだ。
(閻魔街は、あの世に分類される。)
その下には、渡したい人の住所・年齢・名前を書く欄がある。
封筒を開けてみると、説明書と便箋があった。
【説明書】
まずは、裏面の宛先を書いてください。
その後に、便箋に内容を書いてください。
書き終わりましたら、窓を開け「お願いします。」と言ってみましょう。
すると、カラスが飛んでくるのでそのカラスに事変書を渡してください。
素敵なお手紙を。
なるほど。意外と簡単だな!!
でも、どう書こうかな…。今までのことを全部書くわけにはいかないし。
まぁ、いいか。
「よし!書き終わった!我ながらいい感じ!後は、カラスに届けてもらうだけだな!」
窓を開け、「お願いします。」と発するとカラスがやってきた。
口を開いたため、戸惑いつつも事変書をカラスの口元へ持っていくと、くちばしで事変書を咥えた。
「器用だなぁ…。よろしく頼むよ、カラスさん!」
飛んでいくカラスを見送り、時計に目をやると針は12時を指していた。
「そろそろ、昼食だな。お腹すいたぁ。」
お腹を擦りながら大広場に向かう。
長く赤いカーペットの上を歩き、曲がり角を曲がると柔らかい感触が高良を襲った。
次回 事変書Ⅱ
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