第11話 【企み】
「篁さんがいない間、こっちも暴れられなかったんだ。楽しませてもらうぜ?」
大蛇は、背後に百匹の蛇を出し酒呑童子へ向けて放った。
ドドドという音を上げながら、辺りは土埃に包まれる。
大蛇が周りを警戒していると、土埃の中から酒呑童子が二メートル程の大きな金棒を片手に現れた。
下には、体が凹んだ蛇の死体が落ちており焦げ臭い匂いを出しながら次々と消えていった。
「流石、上級妖怪。初っ端からこんな攻撃で来るなんてなァ。」
そう言って、酒呑童子は金棒を大蛇の方へと振り下ろす。
すると、振り下ろした衝動で地面が割れ、割れた破片が大蛇の方に降り注いだ。
瞬時に太い蛇で自らを包むと、酒呑童子は「やるねェ」と鋭い牙を出して笑った。
まずいな。こんな攻撃なら、閻魔街の被害が拡大する。俺の後ろの方の被害はまだなのに。
足止めしねぇとな。
その頃、高良はまだ負傷者が出ていないため避難の手伝いをしていた。
「とにかく閻魔街の外に出てください。そしたら、天狗さんが安全な所まで連れて行ってくれます!急いでください!!」
「高良ちゃん!避難は警備の鬼に任せて、あなたはこっちに来て!…負傷者がでたわ。」
悟の言葉に動揺しつつも、そんな暇はないと思った高良は急いで悟の後へ続いた。
「あ、悟さん、高良さん。こっちです!」
警備の鬼が、悟と高良を負傷者の所まで案内すると目の前には肌が紫色になった一旦木綿が倒れていた。
ハァハァと苦しそうに息をしながら、大量の汗が吹き出ている。
「一旦木綿、聞こえる??喋れる?」
悟が、一旦木綿に顔を近づけると一旦木綿は掠れた声で話し始めた。
「緑の翼を…持っ…た男が…、毒を……。触っただけで、発症…し…て…。」
触っただけで…!!?
悟は急いで解毒剤を用意し、一旦木綿に飲ませた。
「とりあえず、私の力でなんの毒かを探るからその間、高良ちゃんは閻魔様に状況を伝えてきて!」
「はい!」
急がないと…!!!
一旦木綿さん、まだあんなに小さいのに…。
すっかり辺りは、暗くなり闇が高良を不安にさせる一方だった。
真っ赤な廊下を自慢の足の速さで走り抜き、閻魔の部屋への扉を押し開ける。
「閻魔様!!!」
「おぉ、どうした。そんなに慌てて。」
しまった、ノックするの忘れた!!!
焦った高良が閻魔と目を合わせながらも後退りして扉を3回ノックした。
「まぁ、その心意気は褒めるぞ…。」
苦笑いする閻魔に、少しホッとした高良は「そんなことより」と話し始める。
「敵側に、触れただけで毒を体に回らせる能力がある者がいます。一人目の被害者は一旦木綿さんです。」
門番である者を倒せるのは、それなりの上級妖怪だ。大蛇と対等といったところだな。
そんなやつが、まだ生き残ってたとは。
「触れただけで…か。なかなか凄い能力だ。分かった、皆に情報を伝える。どんな身なりをしていた?」
「緑の翼の持ち主だったとのことです。」
緑の翼…。
聞いたことがある。猛毒の持ち主だとか。
あれ……こいつの主食って…。
「まずいな。」
「はい、『触れただけで』ですからね。」
閻魔が恐れているのはそんなことではない。
緑の翼を持つ、猛毒の持ち主。
耕地の上を飛べば、作物がすべて枯死してしまうという言い伝えがある、鴆という妖怪だ。
その鴆と言う妖怪は…
「違う。大蛇が危ない。」
蛇を主食とする妖怪だからだ。
次回 大蛇
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