第8話 【予兆】
全ての関所を回った高良達は、閻魔のもとへと向かった。
「以上が、関所で聞いた話です!」
「ほう、ご苦労。外の街での話が気になるな…。」
外部からの攻撃は今までで何度かあったが、篁が対処してきたからな。
何より、生きている人間がこの世界にいることが知られたら、とてもじゃないが対処しきれん。
今のうちに手を打っておいた方がいいな…。
「よし、明日は暇だろ。外の街に行ってはくれないか?」
「はい?正気ですか、閻魔様。」
流石に、閻魔の急すぎる発言には大蛇も耐えきれなかったようだ。
「安心しろ。護衛はつける。まぁ、お主がいるなら大丈夫だと思うがな。」
「上級だとは言え、俺はそんな強い方ではないですよ。」
上級妖怪でも、自分との相性が合わなければ苦戦することもあるのだ。
外の街かぁ……。楽しみだな!!!!
どんな妖怪たちがいるんだろう、大蛇さんはあまり乗り気じゃなさそうだったけど…。
高良は好奇心を胸に、明日になるのを待ったのだった。
翌日_______
「護衛として参りました!天狗と申します。」
天狗にしては、あの特徴的な鼻がない。
いたって普通の鼻だ。
それに加え、赤い肌でもなかった。
「あの…、天狗って赤い肌だったり鼻が長いんじゃ…。」
「あぁ、それは昔の姿ですね。今は、人間のような姿をしています。大蛇だって人間の姿をしているでしょう?それと同じです。」
確かに、舌は蛇みたいだけど全然妖怪には見えない身なりだ。
ん?大蛇…?呼び捨て…。
仲いいのかな?
今度、聞いてみよ!
「なんで、二人は人間の姿をしているんですか?」
「え?ダサいじゃん?」
天狗が、あたかも当たり前と言わんばかりの顔で即答した。
え、それだけ?
the妖怪って感じして、昔の姿でもかっこいいと思うけどな…。
「おいガキ。言っとくが、理由はそれだけじゃねぇぞ。俺達は、たまに現世に行くこともあるからだ。元の姿だと出歩けねぇだろ。」
全ての妖怪が、現世に行くということではないが、閻魔街や獄城などで働いている者は現世に行って、もうすぐあの世に来る人達の視察や、神社などに行き、その妖怪の力を注いだりするのだ。
「さてと、世間話はこれぐらいにして外の街、行きますか!」
そういって、天狗は高良の顔より一回り大きいヤツデの葉を取り出し大きく一振した。
その瞬間、天狗を中心に竜巻が起り、気がつけば薄暗い場所に居た。
「着きました!ここからが外の街ですね。」
天狗の能力の一つ。
天狗の武器であるヤツデの葉を一振すれば、行きたい場所に行くことができるのだ。
「すげぇ!!!」
高良が、飛び跳ねながら興奮しているのを眺めていると、大蛇はあたりを見回した。
「なんか、いつにもまして静かだな。」
「そうですね、いつもならそこら辺に下級妖怪がうろついてたり、襲いに来ますもんね。」
いきなり襲うなんて……。
なんて、物騒なんだ。
「とりあえず、そこら辺回ってみるか。」
閻魔街とは大違いで、外の街は汚く、活気が溢れていない。
辺りは、煙臭く廃墟ビルや、道路に酒瓶やらが散らばっていた。
人気はなく、下級妖怪と一度すれ違ったが襲われることはなく、睨みつけて街の外へと出ていってしまった。
大蛇によると、夜は特に賑わっているらしい。
訪れたのが、朝というのもあって人がいない可能性があるとのことだった。
「また、夜に来ます??」
天狗がそう言って、ヤツデの葉を出そうとした瞬間だった。
後ろから殺気を感じた大蛇が素早く振り返り、天狗は高良を担ぎ上げ、殺気の方向から距離をおいた。
「誰だ!?」
大蛇が声を上げると、草の茂みから着物を身に纏い大きく鋭い角をもった、50代くらいの男性がゆっくりとした足取りで出てきた。
「いきなり、上級妖怪のお出ましかよ。」
大蛇がそういって睨みつけると、男はニヤリと笑って口を開いた。
「まず、名前を聞く時は自分から名乗るってもんだぜェ?にしても、見ただけで分かるのかァ。さては、お前も上級妖怪だなァ?」
上級妖怪は、下級妖怪と上級妖怪が分かる。
その妖怪の、経験、オーラなどで見分けることができるのだ。
「俺は大蛇。お前の名は?」
「酒呑童子。」
酒呑童子!!?あの怖い鬼の王とも呼ばれている…!?しかも、めちゃくちゃ強そう…。
どうか、戦闘になりませんように……。
「酒呑童子。お前、俺達に用があんだろ。」
大蛇は、冷静に話を進め戦闘に移すことが多い。
経験が豊富なため、自分にあった戦い方をしているのだろう。
何より、感が鋭いのが大蛇の強みだ。
その目で、その鼻で、嘘と真実を見分ける。
「おぉ、流石蛇ヘビさんだァ、鋭いねェ。俺は別に、戦いたくて来たんじゃあない。忠告しに来たんだァ。」
「「「忠告?」」」
3人が口を揃えて言うと、酒呑童子は両手を広げ口を開いた。
「明日の大禍時、閻魔街へ遊びに行くゥ。」
次回 作戦
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