第7話 【外の街】
「着いたぞ。」
大蛇の声に気付いた高良は、周りを見渡した。
すると、目の前には真っ白な布を纏った少年がいた。
「え、小さい!!!かわいい!!こんにちは!」
高良がニマニマしながら少年に近づくと、少年が身に纏っていた、白い布が高良の方へと伸びていき、一瞬にして高良の体を巻き付けた。
「うぐ!!動けない…。」
そんな間抜けな姿をした高良を見た大蛇は、やれやれと言わんばかりの顔で少年に話しかけた。
「離してやれ、こいつ変質者とかそういうんじゃない。」
大蛇がそういうと、少年は慌てて高良に巻き付けていた布を離した。
「ご、ごめんなさい!気持ち悪い顔をしていたので、何か良からぬことを考えていたのかと!!」
「気持ち悪い顔…。」
なんとも、愛らしい声で言葉遣いがとても丁寧なため、悪気がないことが分かり苦笑いをしていると、横で大蛇が笑っているように感じた高良は耳を赤らめた。
「…君、名前は?」
「私は、一旦木綿と申します。閻魔街出入り口の門番をしている者です。もしやあなたは、閻魔様の新しい秘書様ですね。お話は伺っておりました。さっきのご無礼、どうかお許しを…!」
一旦木綿!!?こんな可愛い男の子が!!?
しかも、門番!!こんな小さい子に、そんな仕事をさせるなんて…。
閻魔街って、結構ブラック…?
「あぁ、さっきのは気にしないで!それより、門番の仕事をしている上で、ここ最近気になったこととかあるかな?」
「そうですね、悪趣味な妖怪たちが最近閻魔街へと侵入しようとしていることですかね。今のところ、私の布で対処できていますが私以上の力の持ち主がやってきた時に、篁さんがいない今、閻魔街は大混乱を招きかねません。」
一旦木綿と大蛇が深刻そうな顔をしている中、高良は一つの案を思いついた。
「じゃあ、外に出て大蛇さんが脅せばいいんじゃない?」
「「脅す?」」
例えば____
大蛇さんが、悪い妖怪をこてんぱんにした後に、鋭い目つきで一言_______
『テメェらも、こうなるかァ……?』
「みたいな!!?どうだ!!?大蛇さんのヤクザに負けず劣らずのその悪党顔っ!きっと、みんな怯えて閻魔街には来れないですよ!」
「おい、ガキ!!殺されてぇのかお前は!」
大蛇が鋭い殺気を放っている一方、一旦木綿は笑いをこらえていたのであった。
「最後の関所は…、げっ三途の川だ。」
「マジかよ。こないだ、お前すげえ奪衣婆様のこと不機嫌にさせたばっかだろ。今日がお前の命日だったりしてな。」
大蛇が、不謹慎なことを言ったため高良の足取りは重くなった。
そんなこんなで、三途の川にたどり着くと、いつも通り奪衣婆が亡くなった人の仕分けをしていた。
高良達に気付いた奪衣婆は、素早く仕分けを終わらせ高良達の方へとやって来た。
「何の用?」
高良へ険しい顔を向けながらも、きちんと自分たちの方へとやって来てくれた奪衣婆を高良は、心のなかで優しい人だと思った。
「最近、ここらで気になることがあったか聞きに回ってるんです。」
「気になることなんかないわ。毎日、仕分けで忙しいし。強いて言うなら、どこぞの小僧が閻魔様の秘書になるということくらいかしらね。」
やっぱり、俺のこと良く思ってないんだな…。
「そうですか…。では、これで…。」
「待ちな。」
高良が悲しそうな表情で、去ろうとしていたとき、奪衣婆は高良を引き止めた。
「あたしは、あんたのこと良く思ってないよ。でもね、期待はしているの。篁さんがいなくなった今、閻魔様はとても困っていたわ。だけど、弱音を吐かずに毎日閻魔街のことを思って行動していた。助けたいけど、私じゃ力になれないと思った矢先にあんたが来た。だから、救世主だと思ったの。」
高良は、自分が呆れられているだろうと思っていたが、奪衣婆の本音を聞いたことにより不安が一気に吹き飛んだ。
同時に、正義感が生まれたのだった。
高良はどこか、自分には関係ないと思っていたところがあった。
だが、高良の存在は皆にとっての希望だったことに気付いたのだった。
「…俺、この世界に来たばっかでまだ何も分かりません。でも、分からないなりに足掻いて皆の役に立てるように頑張ります!篁さんには、敵わないけど、俺なりのやり方で役に立ってみせます!」
奪衣婆は、その言葉を聞きたかった。
高良の言葉に嘘はないと分かっていたからだ。
「えぇ、 頑張りなさい。」
こうして、高良と奪衣婆の関係は深まったのだった。
次回 予兆
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