第5話 【事変書】

まじか…、。


「ちょ、閻魔様!何を言い出すかと思ったら、、!このガキに秘書が務まるわけないじゃないですか!」


な、失礼な!!でも、否定できん……。

国語32点だからなあ。

始めて30分くらいで打首にされそう。


「そうですよ!秘書の役目はこの私が!」


「お主は、三途の川の仕事があるだろう。大丈夫だ、一から小僧に教えてやればいい。」


「「ですが!!」」

奪衣婆と大蛇が焦りながら声を揃えると、閻魔は鋭い目つきで二人を見た。

「お主らは、儂の言うことを否定するつもりか?」


閻魔の言うことは絶対。口答えをするものは、即打首、拷問の刑に処される。

そのくらい、閻魔は権限を持っている神的存在なのだ。


「…いいえ、そんなつもりは!!」



おぉ、ほんとにこういうこと言う人いるのか、、閻魔っぽいなぁ…。

あ、閻魔か。


「……すぐに、教育係を手配いたします。」

そう言って奪衣婆が頭を下げると、時空が歪み部屋の外に出されていた。


「おぉ、すっげ。」

どうやら、閻魔の判断で来客を部屋の外に出すことができるらしい。


「あんた、閻魔様の手を煩わせたらただじゃおかないから。」

奪衣婆は、高良を睨みつけてさっさと歩いて行ってしまった。


やべぇ、何も言わずに決まってしまった。

でも、打首されるよりかはましか…。


いま、凪は何してるんだろう。


その頃凪は、高良の存在について調べていた。



結局、学校に行っても高良の存在はなかったことになってた。

「どうなってんだよ、。」


高良がいなくなってから3日が経とうとしていた頃、もう凪は高良を探すことを諦めかけていた。


色んな人に高良の存在を聞いて、ネットでも神隠し的なものを調べ尽くした。

全部やった。だけど、あいつはいない。

親も、精神科に行かせようとしてくる。


マジで、どこいったんだよ……。

「高良……。」



秘書になり始めて、初めての朝を迎えた高良は大蛇と閻魔街を散策していた。


「なに?現世のものに手紙を送りたい?」

大蛇は、眉間にシワを寄せて言った。


「うん。せめて家族に現状を伝えたい。心配させたくないんだ。」


警察沙汰になってたらどうしよう…。


「できないこともないが、面倒だぞ。」


「やれることなら、なんだってやるさ。」


高良の真剣な眼差しに、大蛇は一息ついて指を指した。


「あの店に事変書というものがある。それを買えば、現世のものに手紙を送れるぞ。」


事変書とは、閻魔街の雑貨屋に売っている品の一つで、三十銭で買うことができる。

(一銭は、現代でいう500円だ。)

1枚につき、一人にしかその手紙は見えないため1枚の手紙を複数人に見せることは不可能だ。


「じゃあ、それ買う!」


「お前、金あんのか?」


あ……。



「てことで、閻魔様!なにかお申し付けください!!!そして、お給料を!!!!」


「おいこら、てめぇ!!閻魔様になんて図々しいことを!!片腹痛いわ!」


給料が何円だか、知らないけど早くお金貯めて凪に手紙を送るんだ!


「確かに、そうだな…。今日から働いてもらおうと思っていたところだ。とりあえず、各関所の見張り状況を調べてきてもらおうか。」


閻魔は、各関所の場所が書かれた紙を高良に渡し、大蛇ににっこりと笑った。


あー、これあれだ。『しっかり面倒みろよ?』っていう笑みだ。なんで俺がこんな目に…。


大蛇は、閻魔の無言の圧を感じ取ったと同時にこれから慌ただしい毎日が待っていることを察した。



次回 噂

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