20240308金 雪のち晴れのち雨
昨晩から降っていた雪が薄っすらと積もり一面雪景色の朝を迎えたのだが、7時を過ぎると急激に晴れだし、昼を迎える頃には雪が跡形も消えてなくなり、かと思えば夕方からは雨が降り出した。
気まぐれでしかない雪のち晴れのち雨という天気を、あらかじめ天気予報が伝えていたのだからその精度に驚く。
小学生の時に天気図の学習をした時、等圧線とか風向きとか様々な線が引かれた日本地図を見ながら、こんな地道な作業から天気予報が出来上がっていくんだということを知り、気が遠くなった記憶がある。
そんな気まぐれ空模様の日、私はおにぎりというアイテムを使って駆け引きをした。
以前、夫には、朝食用のおにぎり1個と昼用の弁当を作ってあげていたのだが、手を付けずに残してくることが多くなったので、ある時全廃した。
「食べる時間がなかった」「お腹が痛かった」
2つの主な理由に、「参ったよ」「仕方なかった」と、俺に非はないという節が付け加えられていた。
私は朝作ったままのおにぎりとお弁当が入ったずっしりしたランチトートを受け取り、まずはおにぎりをゴミ箱に入れ、次にお弁当箱の蓋を外し焼き鮭や卵焼き、青菜を見ながら真っ逆さまにしてゴミ箱に落とす。
お弁当箱の形に固まったご飯の後ろ姿とは裏腹に、私の背後で夫はグラスに氷を入れお酒を呑む用意を始めるのが常だった。
そんなことが数回続いたある日、いつものように残してしまった理由をグダグダ言う夫を遮り告げた。
「もうお弁当作るのやめる、食べられるときに食べたいもの買って食べて」
「え、作ってくれよ、買いに行く暇ないよ」
「もう捨てるの嫌なの、それに、お腹が痛くてお弁当を全残ししてるのに、空きっ腹でお酒を呑むってあり得ない」
夫はようやく申し訳なさそうな顔をして謝ったり言い訳をしてきたが、私はそれ以来お弁当を一切作らなかった。
それから1年近くたった今朝。
おにぎりが2個入ったランチトートを夫に渡した。
雪をかぶった車の運転席に座ったのを見計らって、窓をコンコンと叩いて合図をし、「?」という表情をしながら窓を開ける夫に手渡したのだ。
「あ、ありがとう」
感動してる様子。
うるっとしてるようにも見える。
帰宅後「ありがとう」と言いながら空のトートバックを渡してくる夫に、「おにぎりで良ければ作るけど」と言うと、驚いた顔で「助かります」と頭を下げてきた。
その頭がさ、髪が薄くなっちゃっててさ、なんか、年取ったなって実感した。
よしっ。
恩を売ったぞ。
情けをかけたぞ。
自分の人生を楽しむための賄賂だと思えば、おにぎりなんてちょろいものだ。
*いつも読んで下さりありがとうございます。
体調を崩してしまったので、明日のエピソードを投稿後、少しお休みします。
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