20240124 ビリー・ジョエル

 ジョニーが来たなら伝えてよって歌でさえ、たった2時間待っていただけで去ってしまうのに。

 16年か。

 待っていたような。忘れていたような。

 とにかくどう考えても、平日のど真ん中にビリー・ジョエルに会えるって、正気じゃない。


「久しぶりに夜外出するんだから、ラクーアあたりで美味しいもの食べてきたら」なんて、気の利いた提案をしてくれた娘。ありがたい。

 しかし、私は推しのライブ参戦で学んだことがある。

 『敏感な胃腸を刺激しないよう、そっと静かに腸内を温めることに徹すべし』

 という訳で、立ち食い蕎麦屋さんで温かいかけ蕎麦を食べた。たぬきもきつねもいらない。ただのが丁度いい。


 蕎麦を食べ終わって、東京ドームに向かう。

 想像以上に人が多い。

 なんとなく年齢層が高い気がする。

 背中に大きく『Billy Joel』と入ったスタジャンを着た人を発見。

 どアップのビリー・ジョエルの顔写真が入った紙袋を持った人もいる。

 洋楽もK-POPも同じ。みんな推しのグッツは嬉しいんだよね。

 物販は午前11時にスタートしたみたいだけど、夕方にもう一度やって欲しかった。

 時間があったのでラクーアにも行ってみる。やはり激混み。

 入店に60分以上かかるという飲食店がほとんどだった。食べるどころではなかったな。

 ところどころに置かれているベンチも満席。

 座っている人をチラ見すると、皆さんじっと動かない。寝てる?

 それにしても、イケオジが多い。革ジャンがいっぱいいる。みんな泉谷しげるとか小林克也だったし、たまにバイキングの小峠だった。(敬称略)


 開演1時間前の18時に、とうとうドーム内に潜入。

 知らなかった、ライブの時も売店って営業してるのね。ホットドック、お団子、ジュースにビールにレモンサワーも売っていた。やはり、大人向けのライブは違う。

 私もお腹が弱くなければ買いたかった。ほろ酔いで見るビリー・ジョエルも乙かもしれない。

 何はともあれ、まずは女子トイレに並ぶ。女子トイレはいつでもどこでも並ぶものだけど。流石、東京ドーム。長蛇の列が階段を上に下に行ったり来たりして蛇行している。おのずと、階段の途中で立ち止まらなきゃならなくて、怖かった。


 開演30分前、ようやく座席に。

 3塁側1階スタンド。なかなかの良席。

 コートをゴミ袋に入れ足元に置き、白湯の入ったマグボトルをドリンクホルダーにスタンバイ。速攻ブルーベリーを2粒飲む。これで視界はクリア。

 持参した大福はドキドキしすぎて食べられなかった。

 それにしても広い。で、ちょっと寒い。


 19時、照明が落とされる。鳥肌。

 真っ暗な会場に、無数の星々が浮き上がった。

 星の正体は携帯電話のライト。なるほどね。

 観客参加型の舞台装置は幻想的でとても綺麗だった。

 もう夢の世界。座席ごと異次元に飛ばされた感覚。

 そして、とうとう、待ちに待った瞬間がやってきた。

 ビリー・ジョエルがステージに現れた。

 大歓声の中、ピアノの前に座る姿がはっきりと見える。

 狂ったような歓声が上がり、一曲目の『My Life』のイントロが流れると、さらに増した地響きのような歓声が沸き上がった。

 『ガラコ~(Got a call~)♪』

 ビリー・ジョエルの第一声!

 みんな待っていた、ビリー声!

 突き抜ける第一音の『ガ』

 声量が凄い。

 昔のまま、あの頃のまま、私が大好きなビリー・ジョエルのままだった。

 大型スクリーンに映し出されるビリーの手。

 大きくてシワがあって、ぷっくりしてて柔らかそう。

 指先が鍵盤の上を自在に飛び跳ねてる。

 本物のビリー・ジョエルのピアノライブは初っ端から飛ばしまくって、最高としか言えない。


 まさかのまさかで、海外のライブではあまり歌われない『オネスティ』も演奏してくれて、耳コピテキトー英語で一緒に歌ってしまった。

 イノセントマン、ストレンジャー。その他も全部知ってる曲で幸せ過ぎた。

 そして、ピアノマン。

 合唱の時間がやってきた。

 楽しみ、でも、最後の曲でもある。体は熱いのに淋しさのせいで寒くなった。

 でも、ちゃんと歌えた。座席近くの人たちもみんな歌ってた。

 会場中に観客の声が響き渡って、ビリーの嬉しそうな笑顔が大型スクリーンに映し出されて感無量。胸がぐっと熱くなって涙が込み上げてくる。

 Xの投稿主さんもきっと泣いてるだろうな。


 アンコールは5曲も歌ってくれて、2時間30分のライブが終了した。

 ほぼ歌いっぱなしのビリー・ジョエルに感謝と敬意を込めて、会場中から大きな拍手とスタンディングオベーション。

 この瞬間に立ち会えた私は幸せだ。


 ありがとうビリー・ジョエル。

 また会いましょう。





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