死闘 カープvsオリックス

永嶋良一

しとう かーぷ ぶいえす おりっくす

 2024年のプロ野球もいよいよ最終局面を迎えた。


 広島カープ対オリックスの日本シリーズは3勝3敗で、最終の第7戦にもつれこんでいた。


 試合は3対4でオリックスがリードして、9回の表、カープ最後の攻撃となった。しかし、ツーアウト、ランナー無し・・・カープは追い込まれた。


 マウンドには、オリックスの抑えのエース、野平が上がっていた。野平はメジャーリーグでも活躍した大ベテランだ。バッターボックスには、カープの若き4番バッター、林堂が入った。林堂がカープの最後のバッターだ。


 ここで、広島の井荒いあら監督がベンチから出た。井荒監督が3塁側の広島ファンに何やらブロックサインを送った。


 すると、3塁側のカープファンが騒ぎ出した。数人のミニスカートの姉ちゃんが3塁側ベンチの上に立って、ミニスカートをめくって見せたのだ。姉ちゃんたちが履いている真っ赤な『カープパンティ』が顕わになった。すると、何ということだ。姉ちゃんたちの口から、オリックスの野平を応援する声が飛び出した。


 「フレッ、フレッ、の・ひ・ら。フレッ、フレッ、の・ひ・ら」

 

 マウンドの野平は驚いて、第1球目を林堂のお尻にぶつけてしまった。


 それを見たオリックスのなか痴魔ちま監督がベンチから飛び出した。中痴魔監督が、大阪弁で相手の広島の井荒監督に言った。


 「こらっ、井荒のボケ! 汚いやんけ。広島の応援団の姉ちゃんのパンティが気になって、うちの野平が投げられへんやんけ!」


 広島の井荒監督もベンチを飛び出した。

 

 「おんどりゃ、どこ見とんのじゃ、ばかったれが! そりゃ、応援団のしたことじゃ。わしゃ、知らんわい、ボケがぁ」


 中痴魔監督も負けていない。井荒監督に言った。


 「どうせ、おまぁら、オレらに勝たれへんねんやろ。そやから、姉ちゃんのパンティで勝とうとしとるんじゃ」


 井荒監督の顔が真っ赤になった。


 「何じゃとぉ。そがいに言うなら、こうしちゃる」


 井荒監督が持っていたホイッスルを口に当てた。ピリピリピリピリーという甲高い音がドーム球場の中に響き渡った。


 すると、その音を聞いた、3塁側のスタンドに陣取った女性たちが全員、スカートやスラックスを脱いだのだ。驚いたことに、全員が真っ赤な『カープパンティ』を履いている。彼女たちは、そのままグランドに飛び降りた。そして、下半身がパンティのまま、グランドの中を縦横無尽に走り回ったのだ。


 井荒監督が勝ち誇ったように言った。


 「どがぁじゃ。そがいにパンティが見たかったら、見しちゃるけぇ~。ドアハハハハ」


 そして、井荒監督はもう一度ホイッスルを吹いた。再び、ピリピリピリピリーという甲高い音がドーム球場の中に響き渡った。井荒監督が叫んだ。


 「そりゃあ、もひとつ、おまけじゃあ~」


 すると、グランドを走り回っていた女性たちがパンティを脱いで、頭にかぶったのだ。彼女たちはそのままの格好で、グランドを走り回る。つまり、下半身がスッポンポンなのだ。


 今度は中痴魔監督の顔が真っ赤になった。


 中痴魔監督がベンチに向かって大声を出した。


 「井荒のボケがぁ! 負けてたまるけぇ。全員、やっちゃれ~」


 すると、オリックスの全選手がベンチから飛び出して・・・グランドを下半身スッポンポンで走り回る姉ちゃんたちを追いかけ始めた。


 グランドのあちこちで、姉ちゃんたちの「キャー、キャー」という黄色い悲鳴が上がる。


 ベンチの裏にいた球団職員が慌ててどこかへ走った。


 少しして、ドーム球場の中に、オリックスバッファローズの応援歌が響き渡った。


 ♬ アー オリックス バッファローズ アー オリックス バッファローズ ♬


 その歌に乗って、下半身がスッポンポンの姉ちゃんを追いかけるオリックスの選手たちは、さながら、全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れのようであった。


 こうして、この試合は、めでたく無効試合となったとさ。チャンチャン。


               おしまい

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死闘 カープvsオリックス 永嶋良一 @azuki-takuan

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