第42話:悩みの種

  ルーク達が未開の森に入ってから早くも三日が経過した。

平地に位置している森というのは、基本的に中心に近づけば近づくほど危険度が上がり、逆に浅い場所は比較的安全だったりする。まぁこの森に関しては浅い場所でも普通にC~Dランクの魔物が跋扈しているので、安全という言葉からは大分かけ離れているのだが……。何が言いたいのかというと、要するに中心を通過する四日~六日あたりが山場なのである。もちろんルーク達もそれを十分と理解しているので安心してもらいたい。


三人は偶然、目的地の方角から流れてくる沢を発見した。木漏れ日が水面に反射し、幻想的な世界が作り上げられてる。それを見つけるやいなや、シルラは目を輝かせ尻尾を振った。


「ほら、遊んでこい」

「でも水は飲んじゃダメだからね」

「ワン!!!」

シルラが遊んでいる間、二人は近くの丸太に腰を掛け、しばし休憩することに。


ルークは徐にマジックバッグに手を突っ込み、とある魔導具を取り出した。これは魔導具屋ではなく、王城の宝物庫に保管してあったものだ。実は、ルークはこれを一目見た時からずっと気になっていた。そのモヤモヤを胸に秘めながら数日過ごし、今満を持して取り出したわけである。


オーロラは問う。

「それは?」

「これはたぶん、遠距離攻撃型の魔導具だと思う」

「あー、なるほど」


ルークは以前から、己に遠距離攻撃の手段がないことを悩んでいた。オーロラはそれを知っていたため、今彼が少し興奮気味に魔導具を弄っていることに納得した。彼女からしても、夫であるルークの悩みの種というのは早々に潰しておきたいので、邪魔をしないようにそっと見守ることに決めた。


「ふむ……」

ルークは魔導具を誤作動させないよう、魔力を抑え慎重に分析する。


(たぶん、魔力を込めた状態でこの引き金を引けば、筒状になっている部分の先端から”何か”が射出され、相手に攻撃を与えるんだろう。上の飛び出ている部分がストッパーで、これを手前に押し倒し魔力を流せば準備完了ってわけか。安全管理の仕方もシンプルでわかりやすく、秀逸だ。さすがは旧世紀の天才達)


「少し試してみようと思う。何が起こるかわからないから、一応氷壁を張ってくれ」

「わかったわ」


ルークは立ち上がり、少し離れた場所まで移動した。

魔導具を片手で持ち、まずはストッパーを外す。

次に魔力を充填し、近くにある木に照準を合わせる。

そして最後に引き金を引いた。

すると……。


プシュッ。


無音で魔力弾が発射され、木を貫通した。

弾の勢いはまだまだ止まらず、後ろの木々にも次々と穴を開け、最後は霧散して消えた。


「……マジか」

「……想像以上ね」

二人は思わず生唾を呑んだ。


(古い文献で見た事がある。確か旧世紀に終焉を齎した原因となった、世界大戦で用いられた魔銃リボルバーという魔導具だ。でも今手に持っているこれは、正直当時の世界をひっくり返す程の力を持っている訳じゃない。ということは試作品の可能性が高いな。しかしそれを考慮しても……)


「少々、今の世界には刺激が強すぎる武器だ。まぁ全然日常的に使うけども」

「ちょっとアタシも試してみたい」

「やり方はわかるか?」

「一連の動きを見て大体理解したから、心配ご無用よ」

「さすが天才」


オーロラは辺りの木々に穴と言う穴を開けまくった。

プシュッ。プシュッ。プシュッ。プシュッ。

「うふふふ。楽しいわね、これ。うふふふ!!!!」

「オーロラを何か変なものに目覚めさせてしまったかもしれん……」


「あれ、ちょうど十発撃ったところで止まっちゃったわ」

「もう一度魔力を充填してみてくれ」


オーロラは言った通りに魔力を込めた後、再び引き金を引いた。

プシュッ。

「あ、撃てた」


「十発撃つごとに魔力を補充し直さなければならないようだな」

「少し面倒だけど、そこまで魔力を持っていかれるわけじゃないから、性能としては十分ね」

「まぁおそらく試作品だからな」

「ふ~ん」


プシュッ。プシュッ。


(よく見れば撃つ度に中心の丸い部分が回転している。十発撃つとちょうど一回転する仕組みか。あそこに魔力が弾として補充されていることは確定だな。それにしても上手く作られたもんだ)


「何はともあれ、長年悩みの種だった遠距離攻撃手段が手に入って良かったわね。おめでとう」

「おう、これで少しは戦いが楽になる」


まだシルラは沢と格闘しているので、今度は身に着けるタイプのアクセサリー型魔導具を調べることに。


「このネックレスはあらかじめ膨大な魔力を溜めておけるやつだな。魔法使いにもってこいだ。オーロラに決定」

「わーい。綺麗~」


「この腕輪は防御力が上がるやつか。シルラに決定」

「この指輪はたぶん状態異常耐性のやつね。ちょうど三つあるから全員でつけましょ」

「このペンダントは……」

「この耳飾りは……」

「この髪留めは……」


どんどん無敵になっていく三人であった。



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