第41話:知らぬ所で

 ルーク達は清々しい朝を迎え、晴れた気分のままテントと結界を回収し、首都の方角へと移動を開始した。

「よーし、そろそろいくか」

「レッツゴ~」「わふ」


時を一日遡る。

場所はゼイクロードの冒険者ギルド支部。

昨日ルーク達は支部長であるオリヴィアに新種の蛇系魔物を押し付け、さっさと帰ってしまったため、彼女は事後処理に追われていた。また暇そうにしていたリリララも半ば拉致のような形で拘束され、オリヴィアの手伝いをさせられていた。


「あと本部への報告書を書けば終わりよ」

「や、やっと終わる……」

「死ぬ……」


と、そこへスキンヘッドの男がやって来た。

「お~、結構順調に進んでるじゃねえか」

「アランじゃない。もし貴方がいてくれてたら、今頃優雅にランチを食べていた頃なんだけどね」

「逃亡者」「裏切者」


「さっきは抜け出しちまって悪かったな。坊主たちの見送りをしてきたんだ」

「「「!?!?」」」


リリとララは驚きながらも問う。

「見送りってまさか……」

「ルーク達はもうゼイクロードにいない?」

「おう。もう次の目的地へ向かったぞ」


「目的地はどこ?」

「それはさすがに言えねえな」

アランは苦笑いをしながら、頬をポリポリと掻いた。


その時、数人の男女が解体場の扉を開け中に入ってきた。全員比較的ラフな格好をしているが、その視線の鋭さから、一目でそういう職業の者だということが理解できる。


先頭を歩く、隊長らしき男が口を開いた。

「ここに支部長のオリヴィアがいると聞いて来たのだが」

「私よ。何か用かしら?」

「ルークという男を探している。何か情報を持っていれば今この場で寄越せ。領主から許可はとっている」

といい、ニーベル公爵のサインが記された書類をチラッと見せた。


その言葉を聞いた瞬間、オリヴィア達は全てを察した。

(なるほど。ルーク君達は訳アリだったのね)

(ルークさん達はお尋ね者だった!?)

(でもアランがルーク達を逃がしたという事は、悪者はこいつ等のほう)


「申し訳ないけど、何も知らないわ。うちのギルドにそんな名前の冒険者は一人もいないし……ねぇ?」

「そうそう。数年間ここで活動してきたけど、一度も聞いたことないよ」

「うん。他をあたった方が良い」


次は怪訝な顔で、解体師達の方を見た。

「そっちで盗み聞きをしているジジイ共は?」

「「「「「知らねぇなぁ」」」」」


ここでアランがようやく会話に参加した。

「残念だったなぁ。まぁ他の場所を探してくれや」

「貴様は、あの時公爵家にいた……!」

「おう。あん時はうちの公爵様が世話になったな」


捜索部隊が公爵家を訪ねてきた時、彼等は相手が公爵なのにもかかわらず、敬語すら使わずに無礼な文言を飛ばした。アランはその時の事をずっと根に持っていたのである。


「お前らはもう少し相手を敬う心を持った方がいいぞ。帝国ならまだしも、ここは共和国だ。帝国の三下連中が調子に乗って良い場所じゃねえ。郷に入らば郷に従えって親に習わなかったのか?」

「き、貴様……!!!」


「本当に皇帝を崇拝しているのであれば、たとえ唾を吐きかけられようとも、たとえ頭を踏みにじられようとも、相手に頭を下げ、情報を貰って帰るってのが真の臣下ってもんだろうよ」

「……」


アランの言葉に何か心当たりがあるのか、部隊の連中は黙ってしまった。


「今回の戦争だって、帝国は公国と共和国の力を借りただろ?じゃあ俺達は共に命を懸けて戦った戦友みたいなもんだ。その国の公爵に舐めた態度を取るのが帝国のやり方ってんなら、そこまでだな」


屈強なAランク冒険者にまんまと図星を突かれてしまい、隊長は反抗も反論もできなかった。悔しそうに唇を噛みしめることしかできなかった。


アランはやれやれと言った感じで息を吐いた。

「まぁ嫌味はここまでにしとくか。それよりもルーク?とかいう男の情報集めを引き続き頑張ってくれや。俺達はここでのんびり新種の魔物とにらめっこでもしてるからよ」


「……チッ。行くぞ、お前達」

「「「「はっ」」」」」

「失礼する」


帝国部隊が解体場を出て、ギルドを後にした瞬間、大きな拍手が巻き起こった。

「さすがアランの兄貴だぜっ!!!」

「俺達が言いたいことを全て言ってくれた!」

「今日もかっけぇな!」


「アラン、ありがとうね。ちょっとスッキリしたわ」

「いやいや、こちらこそだ。あの坊主のこと黙っててくれてありがとな。リリララと解体師のおっちゃん達も」

「お安い御用だよ!」

「私達は当たり前の事をしたまで」

「「「「「おうよ」」」」」


知らぬ所で愛されまくるルーク達であった。



その後帝国の捜索部隊は、皇帝の命令を遂行するべく、何日も徹夜でゼイクロードとその周辺を探し回ったが、特にこれと言った情報を手に入れられず、泣きながら帝国に帰還した。意気揚々と共和国に乗り込んだ彼等だったが、結局何の成果も得られなかった。


その頃ルーク達は。

「~♪」チョロチョロ


「マーキングってやつか」

「犬の本能ね」

「縄張り意識が高くて結構。その調子で小便をかけまくって、森の魔物どもをわからせてやれ」

「わふ」


木にマーキングをするシルラを温かい目で見守っていた。


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