第29話:砂漠のダンジョン①
ルークとオーロラ、シルラは宿屋に泊まり、明日のダンジョンアタックに向けて身体を癒すことにした。
その夜、ニーベル公爵家の書斎にて。
「例の彼はどうだった?アラン」
「非常に好印象でした。警戒心は人一倍強いですが、しっかりと筋を通せる男です。滞在させても特に問題は無いかと」
「ほほう。では予定通り、放置する方針でいく」
「了解」
「他に何か気が付いた事はないか?情報は少しでも多く持っておきたい主義なのでな」
「では彼らの実力について少々お話したいことが」
「是非聞かせてくれ」
「公爵家諜報部の情報によれば、確か彼は最下級スキル所持者でしたよね?」
「ああ。それが追放された原因だ」
「嘘だと思います」
「!?!?」
ニーベル公爵は一瞬目を見開いた。
「その根拠は?」
「重心の置き方に視線の動かし方、内包魔力に覇気、そして存在感。今挙げた全てが段違いな上、おそらく頭の回転も相当早い」
「……」
「あれは蜥蜴の皮を被った龍です」
「Aランク冒険者のお前が言うのであれば、本当なのだろうな……」
「ちなみにパートナーの彼女もかなりの怪物です。魔力の底が見えませんでした」
「アランを派遣して良かったと、つくづく思う」
「ニーベルお抱えの冒険者達に、あらかじめ御触れを出しておいた方が良いかと」
「そうさせてもらおう」
翌朝ルーク達は、ゼイクロードの端にあるダンジョンを訪れていた。
ここは唯一都市内に位置しているので、分厚い防壁が何重にも張られている。
「ここが"砂漠のダンジョン"か」
「朝から賑わってるわね〜」
「ワン」
目の前には巨大な岩が鎮座しており、下の方にポッカリと穴が空いている。鎧姿の衛兵達が厳重に警備を行っているその穴が、ダンジョンの入り口である。
またその周辺は数多の冒険者達で溢れかえっていた。攻略メンバーを募集している冒険者パーティーと、スカウト待ちのソロ冒険者である。
「中級スキル以上の近接戦闘系職業を一人募集中だ」
「攻撃型魔法使いが必要なパーティーはいないかー?」
「朝から熱心なこって」
「知らない人によく背中を預けられるわよね。アタシは絶対嫌」
「同じく。いつ裏切るのか分からない爆弾みたいな奴とダンジョンに潜るのはごめんだ」
「シルラも知らない人に付いていっちゃだめよ?」
「ワン!」
その時、前から怪しい三人組が近づいてきた。
「そこの二人。もしよければ俺達と潜らないか?」
「若者二人だけじゃきっと心細いでしょ?僕たちはこのダンジョンを知り尽くしているから安心して」
あたかも二人を心配して声を掛けてきたように装っているが……。
(完全にオーロラ目当てだな)
三人の目は完全にオーロラの美貌に釘付けになっていた。
「悪いけど結構よ。誘ってくれて感謝するわ」
「まぁまぁ、そう言わずに」
「そこの銀髪君よりは頼りになるよ?」
「俺たちみたいなベテランの話は素直に聞いておいた方が良いぜ」
オーロラは眉間に皺を寄せた。
「身内を悪く言う人とは絶対に組まないわ。消えてちょうだい、目障りよ」
「ということだ。諦めて他をあたれ」
「チッ」
「ガキの癖に……」
「痛い目見ても知らねえからな」
三人組は悪態をつきながらどこかへ行った。
「最後に本性を表したな、あのクズども」
「油断も隙もあったもんじゃないわ」
「ワン」
ルーク達は衛兵に冒険者タグを見せ、ついに足を踏み入れた。
「これは……すごいな」
「異世界みたいね!」
「ワン!」
ダンジョンの中は全くの別世界だった。
天には太陽が昇っており、遠くまで広がる砂漠を燦々と照りつけている。三人は今まで砂漠を訪れたことがなかったため、それも興奮材料の一つとなっている。
ルークの顎から汗が流れ落ちた。
「夜は昼間と違いクソ寒くなるらしいが、信じられんな」
「マジックバッグを待っててよかった〜」
マジックバッグは冒険者の欲しい魔導具ランキング第一位に君臨するほど素晴らしいアイテムである。
拡張機能だけでなく状態保存機能も付いているため、一度中に入れてしまえばどんな物も劣化しない。
二人のマジックバッグの中には生活に必要な物が全て入っている上に、日頃から色々な食料を放り込んでいるため、ダンジョンにも準備無しで挑むことができる。
「今氷のリングを作るから待っててね」
「おう」「ワン」
オーロラは溶けない氷でリングを作り、ルークとシルラに配る。
三人はそれを首にかけた。
「どう?涼しいでしょ?」
「めっちゃ快適」
「わふ〜」
三人は移動を開始した。
今回の主な目的は、魔物素材の確保とダンジョンに慣れることである。
シルラが元気に走り回り、その後を二人がついて行く。
「あまり遠くに行っちゃ駄目よ〜」
「カバーできる範囲で遊ぶんだぞ」
「ワン!!!」
「そういえばシルラのスキルってなんなんだろうな」
「さぁ。そのうちわかるんじゃない?」
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