桃の節句は女の子同士で
シィータソルト
第1話
今日は3月3日、雛祭り、堅く言えば桃の節句だ。女の子の健やかな成長を祈る日である。家が近所同士である、花子と苗は、両家とも家が貧しく、アクリルスタンドの雛人形しか買ってもらえなかった。だが、二人はそれでも満足し、二人はお揃いのアクリルスタンドのお雛様を飾っていた。
花子がアクリルスタンドを整えながら、
「本当はお内裏様だけど、お雛様同士で隣り合っているの可愛いね」
と自分達ならではの雛祭りを楽しんでいた。
「本当だね。私達みたい」
と、苗も同意する。
「私、お雛様みたいな綺麗なお姫様になりたいな」
「私もなりたいな」
「苗ちゃんは誰と結婚したい?」
「花ちゃん!! このお雛様達みたいに着飾って結婚式挙げたい!!」
キラキラした目で将来を夢見る乙女は幼馴染に告白した。
「まだ苗ちゃんとは結婚できない……大人になったらしようね!!」
だが、苗はしょげかえってしまった。花子とは対照的に。
「でも、お母さん、言ってたよ。女の子同士では結婚はできないって……私はしたいと思ってるよ? だって、花ちゃんのことが大好きだもん!!」
涙をぽろぽろと流しながら、強く訴える苗。
「大丈夫だよ。私達が大人になる頃には、きっと世界も変わって、結婚できるようになっているんじゃないかな?」
それでも泣き止まない苗。
「……もし、このままだったら?」
「そうしたら、結婚できる国に行こうよ。大人になったら私達もっと広い世界に行ける。こんな狭い世界で収まりたくない!! その為にも今から貯金頑張らなきゃ!! 会社も良いところ勤めないとね」
「……!! 花ちゃんの言う通りだね! 私達は自由だ!!」
二人は手を取り合い、家に帰った。
時は過ぎ、二人は成人した。成人式の振袖を二人で近所の神社で撮影した。
「大人になったね。高校までの勉強も頑張って就職も二人共決まったし、これから同棲もするし、これからもよろしくね」
「こちらこそ。ねぇ、花ちゃん。今、私達、かつてのお雛様みたいだね。あのアクスタの」
「うん、実は今日持ってきているんだ」
「……私も」
二人は鞄から、アクリルスタンドのお雛様を取り出し、手の上で並べる。
「ねぇ、もう一回、これ持って写真撮らない?」
「そうだね、記念に!!」
二人並んですまし顔。その手にはお雛様のアクリルスタンド。お嫁に行くのはいつのことだろう。だが、二人が、将来、手を取り合って未来を歩み続けていることをお雛様達は見守っていることだろう。
桃の節句は女の子同士で シィータソルト @Shixi_taSolt
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