町の夜5
町に侵入した竜を八つ裂きにした後で、はたとここが町中であると気づく。
片付けなければ、また夜の病が発生するかも。
まあ少なくても腹の中に柱姫がいないのは確認できた。
柱姫が死ねば、世界に衝撃が伝わるのだが、きっちり確認することは大事だ。
だからこそ自分は柱姫に逃げられていないし、死なせてもいない。
それにしても妙だったな。
首を傾げる。
まるで酔っぱらったような?
この竜なら知っている。結構用心深いヤツだったはずだ。
町には近寄らなかった。
アトリの動向を窺っているようなのは何度か見かけた。
隙あらば、ということだろう。
柱姫が町までやって来た匂いか気配かにひかれて町までやって来たか。
こいつに柱姫の跡を追わせてみてもよかったか。
頭を軽く蹴る。まだ使えるだろうか?
衣が汚れたな。
今日は雨は降らない、川にでもいくか。
朝になれば、原状回帰するが今夜中にはもてなしの夜を引き継がなければ。
汚れた衣で
足の下で頭が身動きした。
闇生類は闇夜だとしぶとい。
白い茨を振るって切り裂く。
白く発光して傷口が裂ける。
妙な声を発する赤い膜の玉が喉から転がり出る。
それも引き裂く。
「コケ───ッ」
いきなり顔面に何かが飛びかかってくる。
「!?」
払いのけると、翻る赤いマントが遠ざかるのが見える。
あいつ、道化師!
町にいる不審者の気配などすぐ辿れるはずなのに、なぜか見失っていた。
まさか竜に食われていたとは。
竜がおかしくなっていたのは、あんなものを口にしたせいか。
「待て!!」
さて、上手く追いかけて来るようだ。
あっちもうまくやってくれればいいのだが。
しかし町の柱姫も曲者なので、一抹の不安がなくもない。
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