町の夜3

ぎろっとした、虫のような銀の複眼はわたしを素通りする。

背景の窓は夜。

飾り付けられた部屋は消えて灰色の石の壁。

異様な虫の目をした白い少年は、間違いなく昼間わたしを案内した少年と同じ格好と声をしている。同一人物だろうか。

昼間と変化していない。

町の柱姫は、鳥籠の中で生首だけの姿をして、生きている。


わたしはそれをなにかに包まれながら見ていた。

混乱を解析しようと努めている。


他人の夢の中にいるようだ。

出演する舞台を間違ったピエロのように間抜けな気分。

わたしは認識されていない。

アトリのマントのせいか。

それともせいか。


塔の階下でわたしの手に滑り込んできた冷たいなにかはわたしを包み込んで、再び塔の天辺の部屋まで連れてきた。

戻るつもりはなかったのに。


これを見せたかったのだろうか。

町の柱姫はなにをされたのだ?

会話から察するにわたしも生首にするつもりなのだろうか。

とりあえず見つかってはならない相手だと認識した。

だが、アトリはどうなのだろう。彼と同じなのか。

恐らくまだ町にいると思うのだが、彼からも逃げるべきか。



どこからか 振動が響く。

白い衣の少年が出ていく。


「母さん」

わたしを包んでいるものが喋った。

町を入ったとき聞こえた声。

わたしを動かして鳥籠を掲げる。

生首と目が合った。


パクパクと赤い唇を動かすが、何も聞こえない。

わたしの腕がいつから持っていたのか小鳥を差し出す。

美女の生首が口を開けて小鳥を飲み込む。


「ギー」

彼女が喋った。


「心臓がイェレトから離れて町に来ている。取り戻せばもっと力が戻る。でも、その前にその子を隠さなくちゃ」




「魔術師が近づいている。柱姫を隠して。魔術師にはその子は渡さない」



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