第14話 世界線を越えた告白

 モニターを切った後で、タオは言った。


「貴方のしたいことがいつもわからない。」


「わからなかった?」


「何か意味がありましたか?」


「諦めさせたいんだよ。俺を。できれば自殺がいいからさ。」


「なぜ、諦めさせたいの?」


「だって、解明できずに発症しそうになったら、俺を殺すだろう。」


「…。」


「いいんだよ。それで。あのウィルスが恐ろしいことは誰よりも何よりも俺が知っているんだから。だけど、誰かにそれをさせたくない。申し訳ないだろう。」


「…毒ガスがあります。苦しまずに一瞬で死ねます。」


「なら、そのボタンは、春人自身にやらせろ。絶対に、タオさんが押すなよ。」


「どうして?」


「いつか後悔するから。大丈夫。俺か、タオさんか、なら、俺はきっと、俺を選ぶから。」


「どうしてそこまで私を気にするの?」


「なぜだろうね。秘密。」


「もしかして、貴方のいた過去にも、私がいましたか?」


「…いたよ。」


「私は、貴方に、好きだといいましたか?」


 春人は驚いた顔を見せた。


「…秘密。ダメだよ。俺の世界線のタオさんは、俺のせいで、ウィルスで死んだんだから。」


「だけど…!」


「ダメだよ。この世界の春人はこのモニターの奥にいるんだから。違うんだよ、タオさん。この俺は、ここの俺じゃない。」


「同じ春人さんよ!」


「そうだ。俺、今日、タオさんを夕食に誘おうと思ってたんだった!」


「話しをそらさないで!」


「いいから、おいで。今日母さん、酢豚作ってくれるんだって。タオさん、大好物だったんだから。」


「…私は、春人さんの親を知りません。」


「大丈夫。急な来客を嫌がる人達じゃないから。タオさんみたいな綺麗な人が来たら、喜ぶだけだよ。」


「…私は、ご飯を食べる時は一人です。その方が効率がいいとウォルトさんに言われました。」


「ウォルトさんらしいや。今から、新しい方法を教えるよ。さあ、おいで。」


 春人が差し出した手を、タオは握った。



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