最期の国鉄へ~「やくも」に乗る
与方藤士朗
200キロ以内に抑えよう!
第0話 玉造温泉の往復。これ一択!
いよいよ新車置換が近づく陰陽連絡特急「やくも」に乗ろう。
とにもかくにも、乗るしかない。
乗る以上は、ちょっと近くにというわけにはいかない。
1979年、岡山大学医学部鉄道研究会の会誌「紫煙」に、当時の181系気動車「やくも」に乗って玉造温泉との間を往復した教育学部1回生の男子学生が手記を出した。
その名もズバリ!
「やくも」に乗る
行きはグリーン車キロ180の車掌室の窓から走行音を録音したり、帰りは伯耆富士とも称される大山を眺めながら食堂車キサシ180でポークカツを食べたり。
この列車というよりも181系気動車のうんちくが、これでもかというくらい書かれていた。もっとも、御本人にとっては素晴らしいことこの上なしの走行音ではあるが、周囲の人にとっては単なる「騒音」であろうことも記されていた。そのあたりは、後に小学校教諭となって定年まで勤められた方だけあって、バランスのとれたルポであったことはきちんと触れておく必要がありましょう。
このルポのときに録音された騒音もとい世にも素晴らしい「音の芸術」は、私共鉄研こと鉄道研究会の大学祭での展示時にHOゲージの「やくも」が走るときに持ち込まれたカセットから会場に向けて流されました。
確かに「キーン」という音が聞こえていました。
その冊子を私が読んだのは、翌1980年11月。
なぜか3日間、昼から夕方まで通い詰めた大学祭の鉄道研究会の展示場で、当時の現役生の先輩方から言うなら「スカウト」されて通うようになった、後の母校となる岡山大学のサークルが、そのきっかけとなった。
その先輩は、岡山から玉造温泉までの自由席特急券と乗車券、乗車券は学割で往復を確保している。
そのルポは、岡山駅のみどりの窓口で切符を買う状況からスタートしていた。
ではなぜ、終点の出雲市ではなく、玉造温泉までだったのか。
それは、岡山からの営業キロにその理由があった。
出雲市まで行ってしまうと、岡山から200キロを超えてしまって乗車券はもとより特急券も格段に値上がりするため、200キロ以内に抑えたとのこと。
その先輩は、玉造温泉駅の西側にある歩道橋から西へ東へと行きかう気動車特急たちを眺めて、数時間を過ごしたという。
当時はこの「やくも」の他に、大阪から福知山線・山陰本線経由で博多まで行く82系気動車特急「まつかぜ」や、益田より山口線に入って小郡(現在の新山口)へ行く同じく82系(のち181系)による「おき」などの特急列車の他に、浜田・出雲市から東京まで行く寝台特急の「出雲」もあった。「おき」は別として、他の列車にはすべて食堂車が連結され、出雲市‐東京間の「出雲3・2号」を除く全列車、営業していた。
私はその当時の食堂車で食事をした経験はないのだが(これは返す返すも残念至極である)、日本食堂米子営業所の担当の列車には「大山おこわ定食」という郷土料理が提供されていたという。おこわの他に、出雲そばもついていたとか。
かの手記に遅れること45年目の2024年2月。
私も、その先輩と同じルートで往復することとした。
しかも、日帰りで。
さすがに今の私は学割なんか使えませんが、岡山から玉造温泉までの乗車券と自由席特急券を、やっぱり、岡山駅のみどりの窓口で購入しました。
今回は、9時5分発のスーパーやくもの復刻編成で。
国鉄色に乗りたいのはやまやまだが、それだと、玉造滞在時間があまりに少なくなるので、折角行くのならと、こちらにも乗ることにしました。
時刻は、8時30分を少し過ぎたところ。
朝から何も食べていないので、まずは、駅構内のかけそばを一杯。
そういえば、一杯のかけそばなんてお涙頂戴の話が流行っていたっけ。それは平成になった頃で、もう私は大学生になっていましたね。その頃にもこの電車、岡山と出雲市の間を走っていたわけですよ。
そしていざ、山陽本線下りホーム・かつての6番線、今の2番線に。かつては山陽本線の特急列車が多数、西に向けて出発していたホームです。
おっとその前に!
かつての7番線、現在は上りホームとなっていますが、かつては下り「やくも」が出発していたホームに出向いて、到着するスーパーやくもの撮影を。
撮影を終らせ、今の2番線に。
すでに自由席の車列には、関西方面からのビジネス客が何人か並んでいます。
さあ、そろそろ、スーパーやくもが入ってきます。
今日は、4両編成。
この3月のダイヤ改正で亡くなる自由席は、かなりの客がいる模様。
もっとも、座席が取れないなんてこともなさそうです。
さあ、久々の「やくも」に。
前に乗ったのは2020年11月、岡山から新見まで。
あれは最初の小説を出版して間もない頃、図書館への寄贈に回っていた頃のことでした。新見までこの「やくも」に乗って、新見駅からバスに乗って市役所前の図書館に行き、著書を寄贈しました。帰りは「やくも」に乗らず、普通列車を乗継いで高梁や金光の図書館に寄贈して岡山に戻りました。
その時以来の「やくも」乗車です。
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実はこの日の日帰りの後、もう一度同じルートを今度は宿泊付で往復することになりました。
それも含めまして、この作品群で御紹介してまいります。
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