第6話上 襲撃

父さん達が、領主の所に行きナナと部屋で遊んでいると、突然城門の方から爆発音が聞こえ、火が上がった。途端に町は騒がしくなり、騎士たちが拡声の魔道具で避難を呼びかける。俺は門の方に行こうとする。

 

 「ナナ、ここにいて。すぐ戻ってくるから。」

 「ダメだよ、ルリ。宿の人の指示に従って逃げようよ。」

 「ちょっとだけだから、じゃあ、行ってくる。」 

 

俺は、窓から飛び降りると、無詠唱で魔術を行使した。


 「上級魔法 迅雷」


俺は、町中に大きな力を二つ感知する。屋根の上を駆け抜け、その人物達の近くのに屋根で停止する。


 「お前はあっちに行けよ。別々の方が効率的だろうが!」

 「仕方ないじゃない十二の使徒ユダの会議で言われたのだもの。それにあなたは少し目を離すといろいろ壊すでしょ。これは命だけを刈り取ればいいの。建物は壊すなと口酸っぱく言われたでしょう。あと、上にいるのは誰かしら?」


女の方にそう言われ、俺は姿を現した。


 「あぁ、なんだよ、女、しかもガキかよ。」

 「絶死、油断しない。霊力量こそは十二の使徒ユダクラスよ。」

 「やられる訳ないだろ。お前は、うるさいんだよ。四聖の所に行けよ。」

 「いやよ、私もここでこの子を殺したいわ」

 「あなた達はここで何をする気なの?」

 「は、人間の魂を回収するんだよ。お前も含めてな。お前の家族も友達も全員死ぬのさ。」

 「そんなこと、許さない。」

 「ガキに何が出来るんだよw。やれ、魔狼。」

 

その瞬間、男の影から狼が召喚される。


 「あぁ、言っておくけど、1回でも噛まれたら死ぬからなぁ。」


なるほど、毒がなにかを持ってるらしいな。


 「神罰よ、降れー雷槍」


雷槍が魔狼を貫くと、同時に男が俺を言葉を放つ。


 「女のガキのくせにスキルは扱えるみたいだな。まぁ、無駄だけどなぁ!」


男が何かを唱える。

 

 『『開け、魔狼門』』


それは、反響し辺りに響く。すると、途端に暗くなり狼を象った祭壇が現れる。


 「どうだぁ、ガキ。怯え、泣いて、俺を楽しませてくれやぁ。」


(…領域系の能力か。少し厄介だな。)

 

 「はっ、詰まんねーガキだな。なんか言ったらどうだ?」


俺はその言葉に攻撃で答えた。


 「春の神が宿らん」

 「特級魔法 神雷」

 「無駄だよ、ガキ。」


攻撃が当たる少し前に男の影から出てきた狼の頭に食い尽くされる。


 「な!」

 「はは、その顔だよ、その顔。絶望が滲み出る顔、特にガキのは見てて気持ちいいぜぇ。」


これが、男のスキルの本質、喰らいつくすということか。


(特級魔法を喰らいつくすとは、魔王軍四天王と同等の力を持っている。これが、スキルの力か。そうだというならこちらも対応するまでだ。)


 「上級魔法 迅雷」


領域の中を音速で駆け抜ける。一瞬で男の背後に移動する。


 「水の流れ、ここに集い一振りの刀となれー固有魔術 蒼刃」


俺の手にクリスタルで作られたような透き通った刀が現れる。


固有魔術 蒼刃

それは、俺が初めて編み出した固有魔術で水の刀を作りだす魔術。

高圧な水を刃にしているので世界一固いといわれるドラゴンセルさえも豆腐を切るように切断することが出来た。あと、何本かの古代遺物を破壊したこともある。


 「染まれー桜水」


刀が淡いピンク色に染まる。桜とは、極東の島国に咲く美しい花のことだ。


 「夜に散れー夜桜」

 「っ!守れ、魔狼。」


男の影から出てくる、狼ごと男の肩を袈裟斬りにする。夜の世界に鮮血が噴き出る。


 「くそがぁ!氷狼王フェンリルー蒼き狼」


男は血を流しながらもスキルを唱える。すると、冷気を纏った狼が10体出現する。


 「このクソガキがぁ!やれぇ!」

 「見渡せー桜雲」


大きな斬撃が飛ぶが狼の前で凍り付き砕ける。


(やはりか、氷を操るスキルにこれは相性が悪いか...。)


俺はこいつに勝つためにもう一つの魔術を発動させる。


 「炎の精霊王ー固有魔術 火炎の覇者サラマンダー


固有魔術 火炎の覇者サラマンダー 

これは、俺が炎の精霊王サラマンダーを殺した後、奴の魔石と俺の魂を融合したときに作られたものだ。この世の炎は全て手足のように操れる。


 「燃やしつくせ。」


その一言で狼が燃え尽きる。


 「は、ここまでスキルを使いこなすか。しかも異なる属性のをなぁ。」


(スキルと勘違いしてくれるならこちらとしてもありがたい。)


「緋愴・千」


千本の炎の槍が飛んでいく。


 「範囲攻撃は厄介だよなぁ。喰らえ。」


すると、狼がすべての槍を飲み込んだ


 「ま、対策がないわけじゃぁないけどな。」

 「...。」

 「はは、だんまりか?そのくせ攻撃は仕掛けるとか戦い慣れしてるな、お前。」


その刹那、男の頭上から雷が襲う。しかし男は無傷でそこに立っていた。


 「今ので終わりかぁ?」 

 「神雷ーホノイカズチ」


炎を纏った雷が男に向かっていく。しかし、男は動じることなく、回避する。俺はその後ろに回り込み、蹴りを入れる。


 「仙術・天 盤瓠」


仙術、それは古代の魔術師たちが弱点である近接戦闘を補うために作られた術。純粋な魔力の波動だがその分威力が凄ましく魔力の循環を遮るため、魔力が多いほどダメージを受ける。盤瓠は、蹴りの膝と足首を起点とし狼の牙のような一撃を入れる。


 「ぐぅ、影の短刀シャドウ・ナイフ!」


男はダメージを多少は受けたようだが、意に介さず攻撃してくる。


 「仙術・真 縮地」


回避しながら、俺は仙術を使い距離を取る。


 「おい、ガキ。さっきの言葉そのままかえすぜぇ。」

 「っ!」


どうやら、俺は攻撃予想地点へと誘い込まれていたようだ。そう気づいた瞬間、氷狼が二体俺の真後ろに出現した。


 「じゃぁな。」    

 「仙術・天 樊梨花」


俺は、花弁のような旋風を纏い、狼達の中心に向かい掌底を放つ。すると、風が狼達を切り裂いた。


 「ちぃ、忌々しいガキだな。」


そう言いつつも、スキルを使用し、追撃してくる。


 「霜の踊り手アイシクル・ダンス


おそらく、本来は広域殲滅用の技なのだろう。ありえないくらいの量の氷柱が飛来する。


 「すべての可能性を此処にー固有魔術 千変万化」


固有魔法 千変万化

この魔法の本質それは、可能性の具現化。それを拡大解釈によって選択した可能性を現実に持ってくる。弱点は、神の寵愛者運がいいやつには効きにくいこと、生物に関しては一分以内に破壊できる部位もしくは殺せる者にしか適応できないことだ。


 「氷柱を」

 

途端に、数えきれないくらいあった氷柱が全て破壊される。ちなみに無生物に関しては無条件で発動可能だ。


 「な、嘘だろ。」

 「神雷ーオオイカズチ」


いままで、一番大きい雷が男に降り注ぐ。砂煙が舞う。それすらも千変万化で吹き飛ばす。すると男は、左腕を血に染めながら立っていた。


 「は、今のはかなり効いたぜ。聖者の影シャドウ・セイクリッド

 

すると、男の左手に影が集まり、傷を癒していく。


(回復系の能力か。かなり万能のスキルだな。)


 「なら、回復する時間を与えない。」

 「それが出来るならやってみろよ、ガキ!」


(とは言ったものの男の魔力量は多い。それでゴリ押しされたらかなわん。ならば、どうするか。封印してしまえばよい。)


 「封印術式1~8までをアクティベート。封印対象はそいつの魔力だ!」


俺の足元から呪印が入った魔法陣が出てくる。そこから呪印のみが男に伸び体に纏わりつく。


 「あぁ、なんだこれ?影の爆発シャドウ・ダイナマイト


影が爆発するが呪印は消えない。男は戸惑いをあらわにする。


 「なんだよこれ!クソ、霊力出力量も落ちてやがるだと。封印系のスキルも持ってやがるのかよ、畜生が。」

 「正解。お前の魔力は封印させてもらったよ。」

 「ふざけやがって。ガキが大人をなめるなよ。俺のスキルはマスター系の能力と神話系の能力だ。そう簡単にはいかないぜ。」


 すると男の雰囲気が変わる。


 「■■■■」

 「は?」

意味が理解できない、いや聞き取れなかったといった方がいいのかもしれない。それくらい理解不可解の言語だった。


 世界が軋み結界が壊れたかと思えば、完全に闇に塗り替えられる。いや、闇というよりは穢れた闇色の神力といった方がいい。


 「どうだ、これが我らが主、邪神ライザック様の領域だ。」

 「刈り取れ、あの者の命の灯を。赤き鮮血を散らせー固有魔術 月代の大鎌」


 固有魔術 月代の大鎌

俺が持つ固有魔術の中で唯一神殺しを達成した武具系の魔術だ。これは消費がデカいのであまり使いたくない。


 「天満月」


斬撃を放つが神力にかき消される。


(なら、一点突破で破る!)


 「モードシフト 星月の弓」

星月の弓

これは、月代の大鎌の弓バージョン。黒い弓に黄金の弦という形状だ。


 「宵月!」


放たれた矢が闇を蹴散らした。


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スキルが絶対の世界で元魔王は、無双する。 宵闇 六花 @konoe1234

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