第4話 ナナのスキル

 「私はね、光輝の矢、聖域、バハムートを授かったんだよ!」


(スキルバハムートだと..。あの時代の聖女が保有していたスキルの一つじゃないか!ナナは聖女の魂の欠片を持っているのか?あと、二つのスキルもほかのだれかに継承されたのか?)


 「ルリ、どうかしたの?」

 「うんん、なんでもないよ。」


思考を中断し、ナナと向き直る。


 「ナナのスキルって、光属性が多くない?」

 「そうだよ。光の魔石に触れたら、この三つのスキルが頭に浮かんできたんだ。」

 


(なるほど、少なからず聖女の魂の欠片を持っているのだな)


俺はここで、気になっていたことを聞く


 「でも、聖域はソテルおじさんも持ってたよね?」

 「えっとねぇ~パパは『家は代々聖域使いだからね。ナナにも、聖域のスキルが授けられるよ。』って言ってたような気がする..?」

 「へぇ~そうなんだ。」

 

(なんだそれは?いや、たしか、《神盾》とか呼ばれてた奴がいたな。なるほど、あれが聖域か。半端な魔術じゃ貫けない障壁だったな。あれを破るのには苦労したぞ。)


 「ねぇ、ルリはどうだった?」

 「私は、雷と闇のスキルだったかなぁ〜」

 

ナナとそんな話をしていると、司祭さんが話しかけてきた。


 「へぇ、珍しいね。闇属性のスキルは、あまり光、雷、炎のスキルとは、混じり合わないのに。」

 「ゼフィリノおじさん、なんで闇のスキルは、その三つと混じり合わないの?」

 「それはね、基本的に闇は光を写して出来るものだからね。その三属性は光を放つだろう?そうすると闇の力が暴走して、そのスキルが飲まれてしまうんだ。」 

 

(なに?その話は、想定外だぞ。あまり、悪目立ちしないように属性だけ、報告しているのだぞ。選択を間違えたか)


俺は、内心後悔しつつも相槌を打っていく。


 「じゃあ、私は珍しいの?」

 「そうだね、考えられるのは、たまたまルリちゃんのスキルと対になるか、そのスキルから、生まれてきたのかもね。」

 

俺達は、他愛もない会話(ほとんど、ナナが一人でしゃべってた)をしながら、父さん達が待つ町の中心にある広場まで、歩いて行く。


 「そういえば、君達は、学園に入学するのかい。」

 「学園?」

 「知らないのかい?王立勇者学園だよ。」

 「何、それ?」

 「勇者が居る事は、2人とも知っているだろう?」

 「うん、パパから教えて貰ったよ!」

 「勇者といえども生れた時からスキルを十全に扱えるわけじゃないからね。邪神と厄災に備えるために勇者たちとその仲間となる存在を育成する場所だよ。」

 「じゃしん?やくさい?」

 「私、本で読んだことがある。厄災は、時空の歪みにより発生した異界への扉ダンジョンのことで、邪神は、マガツイノカミみたいな闇のスキルの力に染められた人たちのことでしょ。」

 「すごいね、ルリちゃん。大人でも『何となく邪悪な者』としての印象しか持ってない人も多いのに。」

 「ルリはねぇ、物知りなんだよ!」

 「なんで、ナナが得意顔なの。」


そのとき、父さん達の声が聞こえる。


 「ルリ、ナナちゃん、どうだった?」

 「ゼフィリノに迷惑かけてないかい?」

 


父さん達が矢継ぎ早に質問を投げかけてくる。


 「大丈夫ですよ、ソテル、シスト。二人ともいい子でしたよ。」

 「おお、そうかそれはよかった。」

 「スキル鑑定の方はどうだったんだい?」

 「どうやら、ナナちゃんは聖域を受け継いだみたいですよ。」 

 「なるほど...。」

 「よかったじゃないか!これでナナちゃんも28代目聖域使いだな。」

 「そうですね。それは、良かったと思いますけど...。」

 「うん?なんか心配ごとか?」

 「いや、聖域は、本領を発揮するのに条件があって、それが、重い決断になるかもしれないと思って。」

 「はぁ?そんなの聞いたことがないぞ。」

 

その情報は神の制約として、俺は聞いたことがあった。


(前世の賢者どもが躍起になって、解除しようとしていたやつか。確かにあれは厄介そうだったな)


神の制約

それは、聖や神の名がつく魔法や技術アーツにかけられたストッパーのようなものだ。それらの技は、強大でその制約がなければ、国一つを簡単に滅ぼせてしまう。それを危険視した神々が制約を加えたのだ。そして、何より恐ろしいのが制約の解除方法。大切な記憶、その果てに寿命が持っていかれることもある。え、俺?魔王なのでそんなものは受け付けないからな。あははははは!おっと、無駄話がすぎたようだな。


 「その、制約ってなんだよ?」

 「それは、片目の視力だよ。制約を外している間は片目が見えなりそれも何日か続くんだ。」

 「おい、それは身体の破損で領主様に届けないとだぜ。」

 「いや、その必要はない。スキルの制約だからね。スキルについての報告は個人にゆだねられているはずだ。」

 「いや、そうだが。」

 「それよりもシスト、邪神教団が動き出す予兆があったと領主様からの報告だよ。僕たちが本都に来るこのタイミングで会議を開催すると、来ていたよ。」

 「そういや、そんな手紙が来てたな。何時からだった?」

 「一時間後でしょ。行くよ。」

 「そうだな、ルリとナナちゃんは宿をとってるからそこまで行ってくれ。」

 「ゼフィリノ、案内してくれませんか?銀の林檎いう宿なのですが。」

 「いいですよ。さぁ、行きましょうか二人とも。」


  


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る