戸惑って怒って悲しんで狂って生きて
ガビ
第1話 人生=黒歴史
私という馬鹿の人生は、ほとんどが黒歴史だ。
いつの時代を思い出しても、恥ずかしい思い出のオンパレードである。
現在進行形で黒歴史を更新しているが、それでも1番酷かった頃と比べたら幾分かはマシになった。
未来が見えない暗闇でもがき苦しみ、小説や漫画に救いを求める人生だ。
これは、自意識過剰な1人の男が自分のフィールドを見つけるまでの話だ。
そんなに長い話でもないので、聞いてくれたら嬉しい。
そして、聞き終わった後、貴方の黒歴史を教えてくれたらなお嬉しい。
傷を舐め合う相手が欲しいのだ。
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「ゔゥん!」
心療内科での待ち時間、私はその声とも音とも判断できないものに身をすくませる。
咳払い。
誰もがする、ありきたりな現象。いや、症状か。
喉に溜まった痰を取り除いく行為。
私は、これがたまらなく苦手だ。
「ゴウぅゥぅ!」「ゥン‥‥‥ヴん!」「カーッッッ‥‥‥ヴぁ!」「ヴェンンンンン!」「ゔぅゥゥぅン!」「ヴン‥‥‥ヴン‥‥‥ヴン‥‥‥」
30秒も間が開くことは無く、多種多様なタイプの咳払いが聞こえてくる。
その度に私は責められている気分になる。
気持ち悪いんだよお前。頼むから俺達のいる場所からとっとと失せろよ。小説なんか読んでるけど、お前みたいな馬鹿が読んでも意味ねーよ。やめろヤメロ。
被害妄想であることは分かっている。彼らは私の存在も気づいていない。
理屈ではない感情が、私の心を蹂躙する。
ただただ、己の名前が呼ばれるのを辛抱強く待った。
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感覚過敏。
名前をつけるとしたら、これが最も近い。
特定の音や匂いに過剰に反応する症状を指す。
3分にも満たない診察のために感覚過敏に2時間耐えた後、ヘトヘトになりながら帰りの電車に乗る。
この時間は、まだイヤホンをつけられるからまだマシだ。
病院でイヤホンをしていたら、診察の順番がきた時に対応できない。だから、2時間息を潜めて待つしかないのだ。
特に音楽が好きというわけではない。外の音を遮断できるものなら何でもよかった。
もう何度も聴いている曲は、音楽を楽しむ用途で聴いていない。周りの不快な音から私を守ってくれるアイテムとして使っている。
吊り革に捕まって眼を瞑って、目的地に着くのを待っていたら、目の前の座席が空いた。
しかし、私は座らない。いや、座れない。
疲れているから、もちろん座りたい。だけど、車内はそれなりに混んでいるため、当然隣に人が座っている。
座ってしまえば、その人と肩がくっつくほど密着しなければならない。そんなの耐えられない。
私は足の怠さに耐えながら、キツく目を瞑り時間が経過するのを待つ。
目を閉じるが眠れない。
瞼の裏を見続けることに飽きた私は、この症状を自覚した小学4年生頃のことを思い出していた。
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