第二回配信


「こーんしゅこんしゅーちゃん!

 さて愛すべき生命体どもよ。暗黒閃光魔大王終焉フィニスの二回目の配信の時間じゃ。

 うむ、皆まで言わずともよい。楽しみにしておったろう。

 おお、そうじゃ、前回の反省を生かして今回は感じ取れる魔力の大きさを極限までに押さえてみたぞ。どうじゃ? 前回怖いと言っていた獣族どもよ。怖くなくなったか? ん?

 ……『こわくなくなったけど、やっぱりこわい』じゃと。ううむ、前回の余波かの。まあそこはおいおい慣れてゆくがよい。

 さあ、今回はどちらかと言えば人族向けの内容になるの。前回のアーカイブにアクセス出来ているものが皆無だったのでな。人族でも出来るように改善した故、その説明じゃ。

 まずコメントを書き込むための魔力の接続方法じゃの。ほれ、我が今指を立てたじゃろう。そこに意識を集中してみるのじゃ。うむ、よろしい。集中さえすればほれ、繋がった感覚があるであろう? そうしたらあとは簡単じゃ。思念をそこに焼き付けるがよい。そうすれば我にコメントが送れるといった仕組みじゃ。

 む、むむむ、なんじゃお主ら、下手くそじゃのう。書き込めてはいるがまともなコメントになっておらぬ。

 ほれ集中するのじゃ、一度感覚を掴めばそう難しいことではない筈なのじゃが。意識を散漫にしてはならぬ。しっかりと伝えたいことだけを表面に浮かべ、それを焼き付けるのじゃぞ。

 おお、無論人族だけじゃなく獣族もどんどんコメントを送ってくるがよい。出来れば怖い以外のコメントがいいがの。まあ無理は言わん。

 人族はもう少しじゃの、ほれ、ほれ、頑張るのじゃ。そうじゃの、今なら成功した人族の質問に何でも答えてやるぞ、大サービスじゃ。

 お、いいぞいいぞ、リスピス大陸のお主、あとちょっと、あとちょっと、おお、成功した! でかしたぞ!

 なになに、『管理者が撤退したとはどういうことでしょうか』じゃと。

 ん、あれ、もしやお主ら、知らされておらんかったんか? 管理者を祀る宗教とやらがあった故、てっきり伝えられているものと思っておったが。

 ふむ、まあよい、何でも答えると言った以上、説明してやろう。

 管理者が撤退したとは、それ以上の意味はない。文字通り、管理者はこの世界より撤退した。撤退した以上、戻ってくることはない。

 ああ、安心せよ。管理者がおらずとも世界は存続する。やり直すことは出来ぬが、続けることは出来る。今まで通り文明を発展させ、生きてゆけば世界が終わることはない。なにせ終焉をもたらすのは我の役目であるのでな。我にその気がない故に、終わることはない、という訳じゃ。

 ん? 『邪神め』?  我のことか? いやいや、我は邪神ではない。世界に終焉をもたらすという役目を担っているだけじゃ。

 お、『神はおわします』とな。神とは管理者のことかの。だからそれは撤退したと……『女神は邪神を許さない』とな。ふむ、女神とはリスピス大陸のお主が信仰しておるものか。ちと待て。世界の記録を確認する故。

 む、うむうむ、管理者を祀っていた宗教は既に廃れているようじゃ、うむ、こちらにはきちんと管理者の撤退が伝わっていたようじゃの。で、今ある新しい宗教か。リスピス大陸で女神を奉じているのは、ニスト教かエリン教かの。おお、我が他の世界に目を向けていた間に、神と名乗る存在が増えておったのか。これは......他の管理者……ではないな、ふむ、面白い。ふむ、ふむ、なるほど。

 おお、失礼、少し記録に集中していた。

 どうやら別の世界の神のなりそこないがこの世界に入り込んでいるようじゃな。それも一つではなく、五つも。管理者が撤退すると、そのような弊害が出るとは盲点だった。

 うむ、つまり外来種ということじゃな。

 いや誤解するでない。外来種とはいえ、悪さをしておらねば問題ない。神のなりそこないであったようだが、信仰を集めて今ではきちんと神として機能しておるようじゃし。

 ううん、だがしかし、この二つはよくないのう。ふむ、人族の中にも区分があるのか。そしてこの二つは区分けした人族を争わせて信仰を集めておる。うむ、これは害悪じゃの。至急取り除くとしよう。

 ああ、だから我は邪神ではないと言っておろうに。そも、神という存在でもない。我は終焉をもたらすという概念であり、現象じゃ。それ以上でもそれ以下でもない。

 んもう、リスピス大陸のお主、邪神しか言えんのか、煩いからちょっとミュートにするぞ。ふう、よし、大人しくなった。

 さて、生命体どもよ。我はこの世界にある生命体を愛しておる。故に積極的に生命体どもの在り様に手を入れるつもりはなかったんじゃがの。しかし外来種は我の愛する生命体の対象外じゃ。それでもこの世界に寄り添って存在していれば問題はなかったんじゃが。

 今確認したところ、人族たちの言うところの人間族と魔族の対立を共謀して煽っている外来種どもがいることが分かった。これはダメじゃ。

 生命体どもを故意に争わせる、ここまではまあ、生存競争の一環として捉えられんこともない。神も信仰を糧に生きる生命体である故な。

 だが、巻き上げた信仰で肥え太るだけ肥え太ったら揃って別の世界に移ろうとしておるようだの。これはダメじゃな、ダメダメじゃ。これは許せぬ。うちの世界をただの餌場にするのは許せぬ。けして許さぬ。

 お、そうじゃ、次の配信はこれにするか。外来種の駆除。うむ、そうしよう。

 ふう、これは他にも外来種が悪さをしておらぬか調べねばならんの。

 ああ、善良な神々は安心するがよい。故意にこの世界を食い潰そうとしておらぬ限り問題はない。

 ということで次回をお楽しみに! なのじゃ。ではの」

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