紙上最低のカードバトル

アリスさんです

単話です

彼のカードゲーマーは1ターン三分以内に展開しなければならないことがあった。


カードゲームで繰り広げられる戦い。彼らの戦いは、ただのカードゲームではない。それは、知恵と戦略、そして創造力の試練になった。


プレイヤーネーム「ブルブルhuh?」が所属するカードゲーム部は、公式大会での勝利を目指していた。そのキーとなるのが、呪文カード「エルフの長期休暇」。このカードは相手のカード名を指定することで老衰ダメージを与え、結果的に撃破する効果を持つ。これを巧みに操ることが、環境を制する鍵だった。しかし、エルフのイラストはともかく、その道のりは決して平坦ではなかった。


とある非公式大会でプレイングスキルを上げるため参加をし決勝まで漕ぎつけた時の対戦相手は、この環境を打ち破るための秘策を持っていた。それは「全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ」に付与呪文「無限寿」の効果を与えるメタコンボだった。「全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ」は戦闘ダメージや直接的な呪文ダメージを無くす代わりに直接場から引き離すような間接的な効果に弱い大型モンスターだ。

「無限寿」は元々ジョークパック生まれのカードであり、1分間の間に宣言したモンスターカード名を指定した名称にする効果を持つ。一般的な使い方は「寿限無」や「ピカソ」を指定すること。これにより擬似的に名前を宣言する「エルフの長期休暇」をはじめとする強力とされる名称指定カードに耐性を付け"相手を全て破壊する"コンボが一般的な使い方とされている。環境に立つならそれらを暗唱できるようにしろとまで言われ対策されていたが、なんと対戦相手は800字の短編小説を詠唱するという前代未聞の戦術をとった。秒間14文字という驚異的な速さで紡がれていくストーリー。


「ブルブルhuh?」は一瞬躊躇ったが緊張の中、決断を下す。彼もまた、「エルフの長期休暇」 を発動してバッファローを指定、800字の短編小説を詠唱し、対戦相手の戦略を撃退することを決意したのだ。理由は当然、受けた勝負に応える。対戦はカードゲームで決着を付ける。そして相互理解を深められるのがカードゲームであり、そのプレイヤーであると考えているからだ。三分間という自分ターン行動制限時間の中で、彼はバッファローを通して物語を理解する。その結果、見事に優勝を収めることができた。


しかし、優勝の喜びも束の間、必死に詠唱したためか小説の内容が気になり始めた。試合後、対戦相手にその小説の続きを尋ねると、その作者がすでに亡くなっており、続きが存在しないことを知り悲しみに包まれる。未完の物語に心を奪われた主人公は、取り憑かれたようにメインデッキを【バッファロー寿限無軸】に変え、その小説の続きを紡ぐことを決心する。


配信される公式対戦を通じて、彼は盤面を完成するたびに自ら書いた800字の小説の続きを展開し続ける。その内容、突飛すぎる戦術の面白さがインターネットを通して話題となり、彼は「全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ」と共に相手の盤面と戦意を全て破壊しながら、次第にその物語が注目され始める。もはや彼はカードゲーマーであることを破壊されてしまったのだ。そして、彼は意図せずして、小説家の道を歩み始めることになった。


かくして、大会での一戦は、主人公にとって予想だにしなかった新たな絆が未来を照らすこととなった。この戦術は後に「バッファロー祭り」という環境を引き起こすのだが彼の創造力と情熱が生んだ物語は、多くの人々を魅了し、カードゲームとはまた異なる形で世界を変えていくのであった。


※「バッファロー祭り」環境から半年後に「無限寿」は公式大会での禁止カード指定された

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紙上最低のカードバトル アリスさんです @arisusun

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