第十一話:悪巧みの後の飯は美味い

 某ファミレスにて、マカロニグラタンを頬張りながらニマニマと笑う男とハンバーグをつつきながら、呆れる男がいた。

 互いに帽子やサングラス、マスクで顔を隠していた。

「いやぁ、あの時は楽しかったな、相棒。あのバーニング…いや、放火魔の泣きっ面と言ったら、何とまぁ、呆気なくて、笑えるっつーか…」

「そんな話を日夜、何百回駄弁っている暇があるなら、次の超雄ヒーローを倒すことを考えろ。今の俺たちは目立ち過ぎて、足が掬われる状況だ。油断は大敵を産むことを忘れるな。」

「そんな、つまんねぇことを言うなよ、相棒。もっと、勝利の余韻に浸らなきゃ。」

「随分、軽率な相棒だよ、お前は。」

 今後のことを対照的に考える瞬木シュンと黒伽羅奪。

「やっと見つけたよ、瞬木シュンに、黒伽羅奪。」

 そんな二人の元に黄緑髪のショートヘアーと緑の瞳を持ち、緑色のヘッドホンを被り、女子高生服を着た少女がスーツケースを引き摺り、現れる。

「ええと、お嬢さん? 何の御用でって…痛っ!?」

「この無茶振りモンスター! この僕に滅茶苦茶なアプリを作らせやがって!」

 黄緑の少女に小突かれたシュンの傍ら、奪は溜息を吐きながら、席から立ち上がり、彼女に右に空いた席を座らせた。

「すまないな、同胞よ。こいつの、相棒の我儘に突き合わせてしまって。」

「全くだよ、この罠使いトラップマスターの孫である森隠もりがくれ 葉花ようか様をこき使おうだなんて。今日はしっかりと奢ってもらうからね。」

 葉花は不機嫌に怒りながら、テーブルにあるタブレットからから苺のパフェを頼んでいた。

「その話ぶりからすると、下水道の罠や違法アプリを作ってくれたのはあんたか! あの時は助かったぜ! って、罠使いトラップマスターって誰だ?」

 失礼を吐かすシュンに対し、葉花は唇を尖らせ、頬を膨らませる。

「何だい、世間知らず、失礼じゃないか…まぁ、教えてあげるよ。罠使いトラップマスターはその名の通り、多種多様な罠でいかなる超雄ヒーローを追い詰めたと言われ、悪雄ヴィラン界隈ではちょっとした有名人だよ。」

「そいつは凄えじゃねぇか。どんな罠を使ったのか詳しく聞かせてくれよ。」

 それを聞いた葉花は胸を張って、立ち上がり、鼻を鳴らした。

「ふふん、良いでしょう。僕のお爺ちゃんの話を存分に聞かせましょう。」


 しばらくして、葉花は苺パフェをスプーンで掬い、頬張りながら、自らの祖父の自慢話をし、シュンは前のめりになりながらも、懸命に聞いていた。

「高速移動の超異能アビリティ覚醒者・ホルダー超雄ヒーローには逆に滑りやすい地表でブレーキを効かずに誘導させて、針の罠でぶつからせたんです!」

「速さを利用して、さらに速くすることで相手の行動を奪うのか、逆転の発想じゃねぇか。」

 そんな二人を見た奪は呆れながらも、彼らの談義に付き合っていた。

(まったく、油断しやがって。)

 背後の席にいる男の気配に気づくまでは。

「誰だ!」



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悪雄学園の正義否定(アンチテーゼ) @kandoukei

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