第一話:幸せは何故、こんな簡単に崩れ去るのだろう。

 真夜中のコンビニ。現代社会を舞台にするバトル漫画での舞台の一つ。まぁ、俺みたいな超雄社会の負け組はそんな展開なんて起きないだろうが。それでいい。

 こんな辺鄙な所でちぢこまりながらアルバイトして、ひっそりと暮らす日々を送った方が性に合っている。坊さんじゃねぇが、超雄ヒーローのいる世俗はもう見たくない。

 と思いつつも、俺はレジ台をただ無意識に経っているだけだ。そんな24時間でもいいことがある。

「お疲れ、シュンくん。交代の時間だよ。」

「こちらこそ、お疲れ様です。芽花先輩。」

 桃色のストレートヘアーと黄緑色の瞳、そしてなにより、Dカップの胸がえろ…じゃなく、素晴らしいバイトの先輩、芽花ミミさん。

 初めのバイトで慣れないことが多く、困った時には何度も世話を掛いてもらい、いつでも優しく柔和な微笑みで気にかけてくれる。

「シュンくん。今日はこんな夜遅くバイトしなくてもいいから、早く帰ってもいいよ。若者だから勉強するなり、寝ようとするなりした方が背が伸びなくなるぞ。」

「芽花先輩だってこんな夜遅くに女性一人でいるなんて、俺より危ないじゃないですか。俺なんて、帰ったって、寂しいだけですよ。」

「もう、シュンくんったら。お姉さんを揶揄うんじゃないの。」

 今行った通りだ。あの忌まわしい火災の後に俺は家出した。あの糞両親さへも見限ったのか連絡も入れずに、仕送りも期待出来ない中、俺は日銭を稼いで、ネットカフェに入り浸った。

 そんな自分を心配してくれたのは芽花先輩だけだった。身寄りさへもない無戸籍の浪人である俺を苦しい訳も聞かずに優しく接してくれた。

 まぁ、そんな長話を思い耽っているうちに、芽花先輩の頼まれ事を聞いた。

「シュン君、頼むけどコンビニ前のゴミ箱の袋を替えてくれる。」

「了解しました。これが終わったら、芽花先輩の帰りに付き合います。」

「ふふ。いつも頼もしいね。」

 俺はコンビニの自動ドアを潜ろうとすると、とあるパーカーの男性とすれ違う。その男性に異様な危機感を抱き、振り返るとそいつは芽花先輩の前に立っていた。

 そいつが芽花先輩の腕を強く掴もうとしたのを俺は思わず、声を荒げ、そいつを殴る。

「芽花先輩から離れろ! この野郎!」

 そいつは観念したのかコンビニの外を出た。俺はそれを気にせず、芽花先輩に駆け寄った。

「シュン君、大丈夫よ。心配しないで。」

 その瞬間、自動ドアの向こうから火球が現れ、芽花先輩を火だるまにした。

「え?」

 そして、燃え盛る芽花先輩が爆発して、コンビニの中が業火に包まれ、俺は熱い空気に肺をやられ、意識が堕ちた。あの男の言葉と共に

「ははっ、燃えろ! 燃えろ! 燃えろ! 俺を輝かせる為に! 俺だけを照らす為に!」



 

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