第14話 温泉

「ねぇ海さん、ここの温泉サウナあるっすよ」


「なんだって?!今すぐ入ろう!」


海先輩はそう言ってルンルンとサウナへ入っていった。


「桜、はやくはやく!どっちが長く居れるか勝負だよ!」


「歳上だからって手加減しないっすよ」


「もちろん!」


久しぶりにサウナに入るせいなのか、体が焼けるように熱い。


思えば私、岸崎桜は海さんと旅行にいくというていを装い、悲惨な事故を防ぐためここに来た。


私は今まで彼女を救うために、生きてきた。


彼女を救うためだけに育てられてきた。


でもそれも明日までなのだろう、全てが終わったら私は一体、なんのためにこれから生きていけばいいのだろう。


「桜、どうしたのそんな暗い顔して?ひょっとしてもう限界きちゃった?」


「海さんこそ、限界きてそうっすけど...」


海先輩は凄い、どんな時も明るく、周りに優しい。


「海さんは将来の夢ってあります?」


「いきなりどうした?!」


「唐突すぎたっすね...」


「うーんとね、無いよ」


「え?」


海先輩はまるで思い出話に浸ってるような、そんなすました顔で語り出した。


「会社で一生懸命働いて、後輩や同僚に愚痴吐いて家に帰って寝る、そんな毎日で意外と満足しちゃってるんだよね」


私は、その言葉が意外だった。


「これ以上は望まないっていうか、こうやってみんなで旅行に行ったり、たわいもないことで盛り上がったり、そんなささいな幸せがしいていうなら私の夢なのかな、もうかなってるけどね!でっかい夢はこれからゆっくり見つけるさ」


そうか、、私は今目標もないけどそれでいいのかもしれない。


全てが終わった後見つければいい。


たとえ見つけれなくてもみんながいるじゃないか、焦らずゆっくり進んで行こう。


「もう限界っす」


「へへっ、私の勝ち!!」


「ささっと出るっすよ、水風呂!水風呂!」


これが私、岸崎桜の人生だ。


﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍

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