第9話 再会

「はいこれ」


映像の内容をまだ完全に整理出来ていない僕に、樫田が注射器を渡してきた。


見た目はごつい形をしているわけでもなく、手のひらサイズぐらいのシンプルな注射器だった。


「さぁもう遅くなってきたし、鈴野海に会える場所や日時を教えようか、彼女はね、明日の朝11時牧野公園のベンチで休憩している」


「ベンチで休憩?」


「どうやら彼女はランニングが好きみたいでね、毎日かかさずやっているんだ」


ランニングを毎日かぁ...活発な彼女らしいな


「とにかく1度会ってみなよ、じゃあ後のこと頼んだよ」


「ちょっと...」


彼は眠そうな顔しながらゆっくりと病室を後にした。


相変わらずつかめない人だと思いつつ、今日のところは早めに寝た。



ピピピピ...ピピピピピピピピ...


(もう10時か、もっと寝たいなぁ...)


などと思いながらも、急いで身支度をし、牧野公園のベンチに向かった。


やっとの思いで公園に着くと海らしき人物がベンチに座っていた。


10年も経っているというのに、彼女は相変わらず美人だった。


まずここは盛り上がりやすい話題を...


「おはよう、今日はいい天気ですね」


なんだろう...自分の会話力の皆無さを改めて思い知らされる、、


「おはよう、いい天気ですねって...初対面みたいなノリだね」


不思議そうな顔でこちらを見つめてきた。


そうか、この世界の僕も未来で彼女と既に出会っているのか。


「あはは、、変な質問だけど俺たちが初めて会ったのっていつ?」


「はぁ!?まさか忘れたの!!私たちは高校二年の夏の終わりに出会ったでしょ?」


「あー、そうそう、忘れてないようで安心したよ」


彼女の向けてくる飽きれたオーラを避けつつ、出会った時期に疑問を抱いた。


「ところで私に何の用?初めてあった日も忘れた康二くん」


「ごめんて、、何の用って言われると今は特に...ただ最近なんか変わったことない?」


「うーん、特に...ないよ」


「そっか、ならまた連絡する」


何か言いたげそうな顔を一瞬していたが、特に気にすることでもないか...


僕はその場を後にした。


﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍

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