第7話 現実

「"今"はって、どういう意味ですか?」


「彼女はね、もうすぐ死んでしまうんだよ」


もうすぐ死ぬ...?一瞬頭がフリーズした。


「彼女は幽霊なんじゃ?」


「君と会った時の彼女はもちろん幽霊だったさ」


なぜ10年後の彼女は生きていて、10年前の彼女が死んでいるのか、ますますよく分からない。


「もう動けるかい?せっかくだから病院の敷地内を歩きながら話そう」


「分かりました」


病院の敷地に出ると、とても10年たったとは思えないような、緑豊かな景色が広がっていた。


「彼女は重い病気なんですか?」


「いや彼女は3日後の8月20日の夜、自宅が何者かに燃やされ巻き込まれてしまうんだ、だから康二くん、君にはその事件を阻止して彼女を助けて欲しい」


なんだそれ...かわいそすぎる。


「分かりました...だけどどうすれば?」


「君に会ったら渡せって言われてるものがあるんだよ、そこに何をするべきか全て書いてある」


そう言って渡されたのは、鈴野海と書かれたあの時拾ったのと同じ赤いお守りだった。


「お守りの中を開けてみて、中に何か入ってるんじゃないんかな」


言われた通りに中を開けるとQRコードが書かれた紙がでてきた。


「ちなみに誰がこれを?見た限りあなたは鈴野海と関係あるように見えないんですけど」


「僕の上司さ、ここに来たのもその上司に頼まれてね、断ったら東京湾にでも沈められそうな勢いだったし」


彼は何処か寂しげに笑った。


「今君、携帯もってないでしょ?敷地内も随分歩いたし、一旦戻ろうか」


そういうことで僕らは、病院に戻った。


﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍

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