第5話 ゼロ

え?聞き間違いか...?


わけが分からない、、彼女が僕の隣にいることは間違いようのない事実なのだ。


「一人で入ってきた...?それ本気で言ってます?」


「はぁ...逆に君は隣に誰か見えるのかい?」


警察官が面倒くさそうな顔をして言った。


その上さっきからずっと黙り込んでいる彼女を見て、僕はなんとなく現状を把握した。


おそらく鈴野海は、僕以外には見えていない。


「行こう」


僕は呼び止める警察官を無視して、彼女の腕を掴んで走り出した。


走ったとこで何も解決しないのは分かっている、でも認めたくはなかった。


「本当はね、私薄々気づいてたんだ...康二以外の人に私が見えていないこと」


彼女は、声を張り上げてそう言った。


「海は、幽霊なの?」


「かもね...今は記憶が曖昧であまり分からないかな」


ばかだ...本人に聞いたところで、記憶がないのなら意味ないのに。


一体これからどうすればいいのだろう。


気づいたら、さっきの飲食店周辺に来ていた。


「どうしたんだい、あなた達こんな時間にこんな人気のない所に来て」


飲食店のお婆さんが、心配してくれたのか声をかけてきた。


「ちょっと色々あったんですけど、一旦家に帰るので大丈夫です」


「そうかい...」


ちょっと待てよ、今"あなた達"って、


「残念ながら林康二くん、君は家に帰れないよ」


「は...?」


声が突然、お婆さんから20代後半くらいの男性の声に変わった。


「あなた何者ですか...康二に近ずかないで!」


彼女は怯えながらも、僕のことを必死に守ろうとしてくれていた。


「何者ですかって...初めて会うんじゃないんだけどなぁ、忘れられてるみたいで悲しいよ」


さっきからなんなんだこいつは、お婆さんの見た目なのにお婆さんじゃない。


すごく危険な気がする、ここから早く逃げなきゃ。


「海一緒に逃げ.....」


突然、首あたりにドスッと何かが当たった。


あれ、体が..動か...ない。


「逃げようだなんて考えたかい?」


謎の人物の手には銃があり、構えているのが微かに見えた。


「少々手荒な真似だけどね、許してくれると嬉しいよ」


どうやら、撃たれたらしい...


案外痛みも感じないんだな...


「そっちに行ったら、まず君の隣で泣いてる彼女にでも会いに行くといいよ」


あぁ...すまない。海...


﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍﹍

最後まで読んでいただきありがとうございます。☆と♡をつけていただけると幸いです。






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