再会

 まさか、と小さく呟いた彼の口元は少し笑っていた。笑うしかない、というか。

「嬉しくないの?」

 意地悪っぽく微笑むと、彼の表情がまた変わった。驚愕、疑心、そして不意にヘナヘナと、力が抜けていく。

「……死んだのかと」

「幽霊かもね?」

「……後を追おうと」

「だからそんな物騒なもの持ってるの?」

 危ないから捨ててしまおうね、と力の抜けた彼の手から奪ったナイフを投げ捨てる。

「君がいなければ、生きている理由がなかった」

「知ってる」

「置いていかないで」

「ごめんね」

 謝る以外に何も出来ない。今の私は何者なのだろう。幽霊や、砂や塵かもしれない。

 それでも君を抱きしめている。それでも君を、愛している。


 終【お題:まさか(2024/09/07)】

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