帰郷
ようやくここに帰って来れた。この日をどれだけ夢見たことだろう。 喜びに胸が高鳴り、小さな含み笑いが浮かぶ。石のアーチをくぐり、懐かしい我が村へ。
「ただいま」
返事は風の音と、雑草の間を跳ねる虫の羽音だけ。誰も管理しなくなり、世界に忘れ去られても、私は一日も忘れなかった。壊された外壁も崩れた家々も、昼の光の下で静かに微睡んでいる。
魔王の復活によって滅ぼされた最初の村。たまたま王都に徴兵されていた私と友人達だけが生き残った。その友人達も、魔王討伐の道程で斃れた。持参した骨壷から、三人分の骨を撒く。
このまま私もここに眠ってしまおうか。座り込んで、空を見上げる。三羽の鳥が、青い空を回る。歌いながら。
終【お題:回る(2024/08/03)】
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