光射すあの場所へ

 あそこで輝いているのは星だろうか。砂の上に横たわったまま考える。頬を海藻が撫で、蟹が腹をくすぐる。実際は肉体なんぞ、とうに無くしてしまっているけれど。

 それでもずっと見上げていた。残滓となった魂が、人の形を忘れられなかった。美しく輝くもの。きらきらと瞬いて、私を誘うもの。

『そちらに行きたいな』

 急に、そして当然のように、そう思った。思いの外、体は軽い。長い間海に抱かれて、やっと溶けたのか。私の怒り、憎しみ、恨み、苦しみは。

 行こう、行こう。泳ぎ、上がる。光射すあの場所へ。そして、掴んだ。

 浮かび上がった私を留めるものは何もない。軽やかな風になる。私が砕けて溶けて、きらきらと光る。世界に満ちてゆく。


 終【お題:きらきら(2024/07/06)】

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