つないで、つないで。
つないで、つないで。そう乞う声に振り向くと子供がいた。他には誰もいない。
「親は?」
「とおくにいっちゃった」
仕方がないので手を繋いでやる。通報されるかな、と頭によぎるがどうでもいい。子供の手はとても冷たい。
俺は元々の行き先へ歩を進める。子供は笑いながら着いてくる。何が楽しいんだ?
ここまで来れば諦めるだろう、と目的地を見せてやった。ほら誰もいないだろ、もう帰れと促そうとして。
「ママ、パパ!」
子供は俺の手を振り解いて走り出した。その先は断崖絶壁の海。慌てて腕を伸ばすがもう届かない。しかし子供は空を蹴って、朝靄の中へ溶けていった。
呆然とそれを見送る。昇りかけた朝陽が眩しい。俺もそこに行く筈だった。
終【お題:つなぐ(2023/10/07)】
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