告解

「私はもう立ち上がることが出来ません」

 男は跪き、額を床に付けながらそう言った。司祭はその前に立ちながら、男の白髪混じりの頭を見ていた。

「犯してきた罪の数を、もう数えることも出来ません。敵を蹴落とし、女を従わせ、金を集めて、しかし転落は一瞬で――今はもう何も無い。私は救われるのでしょうか。救われないのならば、いっそ自らの手で楽になっても……」

「しかし、貴方は立たねばならない」

 司祭は毅然と言い切った。

「……神様の靴でも舐めれば救われるなら、いくらでも」

「そんな事に意味はない。貴方は立つんだ」

 どうやって――と顔を上げた時、そこには誰もいなかった。揺れる千切れたロープと、首の痛みだけがあった。


 終【お題:靴(2023/04/01)】

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