第30話「ベッドへのお誘い」

「――えへへ……」


 俺のワイシャツに身を包むと、ルナはとても嬉しそうに笑みを浮かべた。

 ご丁寧に下も脱いで、下着と白い太ももがワイシャツの隙間からチラチラと見える。

 お姫様がしていい格好じゃなかった。


「なんで、アイラちゃんは何も言わないの……?」


 この子は護衛兼お世話係とのことなので、普通はルナの格好をとがめる立場にあるんじゃないだろうか?

 今ルナがしている格好がまずいものだというのは、わかっているはずだ。


 まぁ元凶――アイラちゃんが、ルナをそそのかしている可能性は大いにあるのだけど、ルナが喜んで着ている時点で、彼女の意思ではあるはずだから……アイラちゃんは悪くないかもしれないし。


「ルナ様があのように喜んでおられますのに、私が口を挟む道理などありませんでしょう?」


 やはり、アイラちゃんはルナが望んでいることだから、許しているようだ。

 従者だからあるじに逆らいづらいというのもあるんだろうけど……そこまで、素直な子には見えないんだよなぁ。


「聖斗様、ベッドへ行きませんか?」


 アイラちゃんに気を取られていると、ルナが頬を小さく膨らませながら、クイクイッと俺の服の袖を引っ張ってきた。

 どうやら、また嫉妬しているらしい。


 この子、独占欲強いよなぁ……。

 まぁ、かわいいからいいんだけど。


「アニメはいいの?」


 先程まではアニメも見たいと言っていたので、一応聞いてみる。

 時間的にも、まだ寝るには早い時間だ。


「あっ……アニメも見たいのは見たいですが、今は……」


 何やら、言いづらそうにするルナ。

 どうしたんだろう?


「ルナ様は、ベッドの中で聖斗様に甘えたいのですよ」


 俺が疑問を浮かべていると、アイラちゃんが教えてくれた。

 それも、ルナにも聞こえるように。


「わざわざ言葉にしなくてもよいのですよ!?」


 図星だったんだろう。

 ルナは顔真っ赤にしながら、アイラちゃんを注意した。


「失礼致しました」


 怒られたアイラちゃんはペコッと頭を下げるけど、その後上げた顔は特に気にしていないように見える。

 この子、メンタルもかなり強そうだ。

 どこか不思議な――掴みどころがない感じだし、とてもいい性格をしている気がする。


 ルナの傍に居続けられるわけだよな……。


 俺だったら姫様の護衛を任されても、プレッシャーで耐えられない気がする。


「ですが、聖斗様には直球でお伝えするのがちょうどいいくらいかと」


 やはりアイラちゃんはメンタル強者のようで、俺の顔をチラッと見てくる。


 この察しが悪い鈍感男には、直接言ってやらないとわからないぞ、と言われている気がした。


 ――いや、実際そう言っているんだろうけど。

 俺もルナの気持ちをわかってあげられていなかったので、言い返すこともできない。


「恋愛とは、こういうものなのです……!」


 しかし、ルナはアイラちゃんに怒ってしまう。

 プンプンッという効果音が聞こえなそうくらいに、頬を膨らませて怒っている。

 ルナはルナで、やっぱり根は子供だ。


 そういうところで、二人は相性がいいのかもしれない。

 他の人たちには見せない、子供のような一面をルナちゃんには見せているのだから、特別視はしているだろうし。


「聖斗様は、お眠りになる準備はできておられるのでしょうか?」


 照れ隠しのように怒るルナをあしらいながら、アイラちゃんは首を傾げて俺の顔を見上げてきた。


「元々やることがなくて寝ようと思っていたから、後は歯磨きをするだけだよ」

「ふむ……」


 俺の返答を聞いたアイラちゃんは、あごに手を当てて何やら考える。

 そして、悪巧みが浮かんだのだろう。

 口角が一瞬ニヤッと吊り上がったのを、俺は見逃さなかった。


「それではルナ様、我々は先に寝室に向かいましょう」


 いったい何を思い浮かべたのかは知らないけど、アイラちゃんは頭を下げて手でドアのほうを指す。

 それによってルナは照れくさそうに髪の毛の先を指で弄りながら、俺の顔を見てきた。


「お部屋で、お待ちしておりますね?」


 かわいらしく笑みを浮かべたルナは、そう言うとほんのりと赤く染まった顔のまま、そそくさと部屋を出て行った。


 アイラちゃんもその後に続き、リビングには俺だけが残されてしまう。

 聞くタイミングがなかったけど、あの感じだとアイラちゃんも一緒に寝るのだろうか?


 俺のベッドは二人までならいけるけど、いくら小柄のアイラちゃんでも三人は入らないだろう。

 てか、お姫様と従者が一緒に寝ることってないだろうし……本当に、何を考えているんだ……?


 俺はそう警戒をしながら、歯磨きをしに洗面台へと向かうのだった。




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【あとがき】


読んで頂き、ありがとうございます(*´▽`*)


話が面白い、ルナがかわいい、もっとイチャイチャしろ、

と思って頂けましたら、

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これからも是非、楽しんで頂けますと幸いです♪

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