第11話「再会と爆弾」
「学校、行きたくない……」
夏休みが終わるまでには――と
もうこうなってくると、本当にルナがいつ帰ってくるのかわからない。
俺はいったい、いつまで待てばいいんだろう……?
そんなふうにやる気がないものだから、当然家を出るのも遅い時間帯になってしまった。
学校に着いたのは、遅刻ギリギリの時間だ。
夏休み明け初日から遅刻しようものなら、引きずってでも家に連れ帰られかねないし、凄く怒られるのは目に見ている。
そういう状況が、俺を学校へと向かわせた。
「おはよぉ……」
俺は元気がないまま教室に入り、久しぶりに顔を合わせるクラスメイトたちに挨拶をした。
しかし――。
「まじだって……! やばいほどかわいかったんだから……!」
「それで、どこのクラスなんだよ……! というか、一年生なのか……!?」
「どっちの子もめちゃくちゃかわいかったの! アイドルかと思ったくらいだもん!」
「絶対芸能人だって! この学校がドラマの舞台になるとかじゃないの!?」
何やら教室内は異様な熱気に包まれており、俺の挨拶にみんな気付いていない様子だった。
そういえば、ここに来るまでの他の教室もうるさかった気がする。
何かあったのだろうか?
「どうしたの?」
俺は自分の席に着くと、近くで盛り上がっていたクラスメイトに声をかけてみた。
「おぉ、聖斗おはよ! 実はな――!」
俺の質問に、クラスメイトが答えてくれたようとした時だった。
キーンコーンカーンコーン♪
キーンコーンカーンコーン♪
――チャイムが、邪魔をしたのは。
「――は~い、皆さん席に着いてくださいね~。立っている悪い子は、遅刻にしますよ~」
すぐに教室のドアが開くと、のんびりとした様子のおっとりとした大人のお姉さんが入ってきた。
茶色に染まった髪にゆるふわパーマを当てている彼女は、俺たちの担任である佐神先生だ。
年齢は確か二十八歳になったばかりで、とても優しいことから男女問わず生徒から大人気だったりする。
あれほど騒がしかったクラスメイトたちが、先生の二言ですぐに自身の席に着き、シーンと静まり返ったくらいだ。
「ふふ、長期休み明けといいますのに、皆さんいい子で何よりです」
佐神先生はニコニコとした嬉しそうな笑顔で、教室内を見回す。
それだけで男子たちはデレデレになり、女子たちも嬉しそうに笑顔になる。
多分この教室は、トップクラスに平和で仲良しだろう。
――この時の俺は想像すらしなかった。
そんな仲良しクラスに、亀裂が入る出来事がまもなく起きるなど。
「そんないい子の皆さんに、本日はとても嬉しいお知らせがありま~す。なんと、本日からこのクラスに、お友達が一人増えま〜す!」
友達が増える?
この時期に、転校生……?
俺がそう疑問を浮かべた直後――。
「「「「「きたぁああああああ!」」」」」
男子たちが総立ちし、ガッツポーズを浮かべた。
「な、何この騒ぎは……?」
男子の中で俺一人取り残され、状況を理解できない。
見れば、女子たちもソワソワとしている。
あれ、状況がわかっていないのは俺だけ……?
「こ~ら、静かにしなさい。座りませんと、皆さんの内申点を下げますよ?」
やんわりと男子たちを注意する佐神先生。
たまに思うんだけど、この先生は言い方が優しいだけで、言っていることって結構怖くないかな?
まぁ、わざわざ指摘することではないんだけど……。
もちろん、佐神先生に嫌われたくない男子たちは、おとなしく席に座り直した。
だけど、みんなソワソワウズウズとして、落ち着きがない。
有名人でも転校してくるんだろうか……?
「はい、静かになりましたね。では、入ってきてください」
教室が静かになったことを確認すると、佐神先生は入口のほうに視線を向けた。
釣られて、皆の視線も入口へと向く。
そんな中――とても目立つ髪色の少女が、姿を現した。
「えっ……?」
教室の入口に立った子を見た俺は、思わず息を呑んでしまう。
上品な笑顔を浮かべる彼女は、優雅な仕草で教壇へと向かって歩を進めた。
間違いない……あの、桜のように綺麗な桃色の髪は――。
「初めまして、一年C組の皆様。先程ご紹介に預かりました、ルナーラ・アルフォードと申します。勉学に励むため祖国アルカディアより留学をさせて頂き、皆様とこうしてご一緒させて頂けることを、とても光栄に思っております。不束者ですが、どうぞよろしくお願い致します」
ルナーラと名乗った彼女は、深く頭を下げた。
それにより、拍手と共に再度教室内から声が上がる。
「こちらこそ、末永くよろしくお願い致します!」
「アルカディアって、あのアルカディア!?」
「よくぞ日本へ……!」
「是非、私とお友達になってください!」
教室中から声が上がっているものだから、全部は聞き取れないし、それぞれ言っていることは違う。
だけど一貫しているのは、みんな彼女と仲良くしたがっていることだ。
それもそのはず。
だって彼女は、絶世の美女並に美しく、そしてとても上品なのだから。
――やっぱり間違いない。
どうして名前が違うのかはわからないけど――彼女は、ルナだ。
本当に、約束通り帰ってきてくれたらしい。
そんな彼女は、教室中からかけられる声に素敵な笑顔を返し――
「もう一つお伝えさせて頂きますと、
――とんでもない爆弾を放り込んだのだった。
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