第3話

黎は冷たい金属の感触と静かな機械音で目を覚ました。視界がぼやけていたが、徐々に周囲の状況が見えてきた。彼は病院のベッドに横たわり、点滴やモニターに繋がれていることに気づいた。

ここは、どこなんだ。何が起きてるんだ。なんで、ここにいるんだ。

キョロキョロと目を泳がせていると、横から声が聞こえた。

 

「黎さん!?目が覚めましたか!」驚きを含んだが耳に届いた。

黎が顔を向けると、そこには白衣を着た人物が立っていた。医師か何かなのだろうか。


「今、隊長を呼んでくるので少し待っててくださいね!」


隊長…?隊長とは誰のことだろうか。

目覚めたばかりで、まだ意識がはっきりしない。頭もズキズキと痛む。

左手で頭を押さえた時に、うでに切り傷があるのが見えた。

それを見た時に思い出した。禁断の契約書…


「起きたのか、体調はどうだ?」低い声が扉の方から聞こえた。

 

俺は、勢いよく首を声のする方に向けた。

そこには腕を組みながら、こちらを見つめる男の人が立っている。年は、二十歳くらいだろうか。若く見える。藍色に近いような紫色のような髪色。

首から腰にかけてを境に右だけに膝ぐらいまでのマントが見え、中には白いシャツ。隊服のような制服のような服を着ている。


「質問に答えろ。体調はどうだと聞いている。」


「あ、え、ええと。よくわかりません…なんだか、頭痛もひどいし、何より体の中に何かがあるような感じです…」


「そうか…」


そういうと、その隊長?と言われる人は息を吐きながら黎がいるベットの隣の椅子に腰をかけて足を組む。


「俺の名前は、藍峰 斗鬼(あいみね とき)。俺たちは『月影(つきかげ)』と言う組織で俺はここの隊長だ。」


「月影…」


斗鬼は、黎の目を見て話す。その目からは、嘘が感じられない。


「そこで、お前に質問する。黎、君はこの契約社会についてどう思う?」


まっすぐ、心のうちを見透かすような目で斗鬼は黎の目を見る。


黎は斗鬼の問いに答えた。「俺は…こんな契約社会はいらないと思います。契約なんて無くなってしまえばいいと…そう思っています。」


斗鬼はその言葉に一瞬の静寂を保ち、その後、微かに微笑んだ。「そうか、君のその考え、興味深いな。」彼は立ち上がり、窓の外を見つめながら続けた。


「実は、月影は、そんな考えを抱く者たちの集まりなんだ。」


黎は驚きの表情を浮かべた。「え?」


「月影は、契約社会の矛盾や不合理を理解し、それに立ち向かおうとする者たちの集団だ。君のように、契約の在り方に疑問を抱き、変えようとする意志を持つ者たちが集まっている。」斗鬼は振り返り、真剣な目で黎を見つめた。「だからこそ、君を月影に入ってほしいと思う。」


黎はその言葉に戸惑いながらも、同時に希望を感じた。「俺を…月影に?」


斗鬼は頷いた。「そうだ。君は無理やり、禁断の力と契約を結ばされた。望んでもいないのに莫大な力を持たされた。まだ15だと言うのに。君と似たような境遇のものたちは月影にいる。君が持つ禁断の契約書の力、そしてその意志は、月影にとって重要な資産となる。君がこの力を制御し、正しく使えるようになるために、我々が君を訓練し、サポートする。」


黎は深呼吸をし、斗鬼の目を真っ直ぐに見つめた。「分かりました。俺、月影に入ります。」


斗鬼は満足げに微笑み、黎の肩に手を置いた。「よかった。これからは君も月影の一員だ。共に戦い、契約社会の未来を変えていこう。」





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ここまで、読んでくださって本当にありがとうございます。

感謝の気持ちでいっぱいです。


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