第2話

黎と綺惺は2人で学校を出て歩く。


「なぁ、綺惺は何の契約をするんだ?」


「あー、俺はね。代々うちの家系が雷の契約を結んでるんだ。だから俺は雷(いかずち)の契約を結ぶよ。」


「そうかぁ」


黎の家は、みんなそれぞれ違う契約を結んでいる。だから、継ぐものも何もない。


「俺は、何も決まってないや。」


「好きなものをやればいいんだよ!自分の人生だから、好きなように生きよう!」


と、綺惺が言う。先ほどまで、不安だったが彼の純粋な眩しそうな笑顔を見たらどうでも良くなった。



そのあとは、綺惺を別れて家に帰り、夜が深まるにつれて、街は静かに包まれていた。


家族と夕食を共にし、笑い声が響く暖かい時間を過ごしていた。母親が作った料理の香りが部屋中に漂い、父親の優しい笑顔が目の前にあった。


「黎、今日は学校で何を学んだの?」母親が微笑みながら問いかける。


「契約の授業だったよ。特に『禁断の契約書』について詳しく教えてもらったんだ。」黎は真剣な表情で答えた。


父親は少し眉をひそめ、「そうか。お前も、もうそういう時期だな。好きなものを選びなさい。お前が契約を選ぶように契約書自身もお前を選ぶ。だから、大丈夫だ。」


そう言って、優しく父さんは微笑んだ。

 

黎は頷いた。「分かってる。慎重にするよ。」


 

そのあとは、晩御飯を食べ終わってお風呂に入りもう寝るために部屋着に着替えた。

黎は自室で勉強を続けていた。窓の外には静かな夜空が広がり、月明かりが柔らかく照らしていた。



だが、その瞬間___


突然、遠くから爆音が響き、家全体が揺れた。

本棚からは漫画や雑誌、ノートも落ちて、黎は驚いて窓の外を見ると、街の一部が炎に包まれているのが見えた。


「何が起きてるんだ…?」黎は急いで階下に降り、家族のもとに向かった。


「父さん!母さん!!、大丈夫?!」黎が叫ぶと、家族は驚いた顔で振り返った。


「何が起きたかわからない!!、早く避難しよう!」父親が急かすように言った。


隣の家からも続々と人が避難しようとしている中、黎たちも外へ出る。

家族全員が外に出ようとしたその瞬間、黒いローブに身を包んだ人たちの姿が見えた。

彼らは、無慈悲に街を襲撃し、人々を次々と攻撃していた。それは、手から炎を出し家を燃やしたり、人も…すぐ近くに火が迫っていて慌てているうちに黎の家族もその標的となり、黒いローブに身を包んだ人たちがこちらを向く。そして、こちらに向かって指を鳴らす。すると炎がこちら側一体に放たれ、家は崩れ始め、瓦礫が家全体を覆い尽くした。


「「黎!!!」」

 

「父さん、母さ!」


最後に聞こえたのは父と母が自分の名前を呼ぶ声で、そこからは落ちてきた瓦礫に頭を打ち意識を手放した。



 ____________


「…ぃ…ぉ………ぉい…おい!!」


「!!?!!」


誰かに呼ばれて目を覚ました。

黎が目を覚ましたとき、周囲は瓦礫の山で、街は壊滅的な状況だった。燃え上がる炎の中、目の前にはあの黒いローブを纏った人物だった。


「な、なんでこんなことしたんだっ!!?!!父さんと母さんはどこだ!!!他の皆は!?!??なんで、俺だけ生き残った!!!??!!」


「禁断の契約書の所有者を探すため。お前の両親は死んだ。他のココ一体の奴らも死んだ。お前は選ばれたから生き残った。以上だ。他に何かあるか?ごちゃごちゃとうるせぇな。」


一つづつ喋れよ。と苛立ちを露わにする。


恐怖と、怒りと、焦りと緊張。

それらのたくさんの感情が渦巻いていて、頭の中が真っ白で何も考えられない。何もわからない…と言う顔で見ていると、黒いグローブをかぶっている人の顔は見れなかったが、その人が黎の前にしゃがんでかぶっていたフードを外した。


だが、彼の目から下には布が巻かれていて、見えるのは目と髪だけ。

彼の目は、濃い紫色だった。

 

「お前は選ばれたのだ。この禁断の契約書が、お前を選んだ。だから、お前は生かされた。」

そう言ってその人は契約書を開いて、その一部を破った。


そして、黎の腕を引っ張り上げ彼は懐からナイフを取り出した。


「っ!!」


『契約を結ぶ際には、必ずその人の血を契約書に垂らす必要があります。血の契約によって、その契約が正式に成立するのです。』

という先生の言葉を思い出した。


その瞬間


__ザシュッッッ


「あぁッ!!!」


ローブを着ている人は、ナイフで黎の腕を切り付けた。そして、腕から血が流れ、禁断の契約書に落ちた。

彼の血が契約書に滴り落ちると、契約書はまるで生きているかのように光を放ち始める。


そして、次の瞬間。

黎に襲いかかったのは、とんでもなく激しい痛み。心臓がバクバク言って心拍数が上がり、全身から汗が吹き出した。


「…あぁッ!!!!!はぁ…はぁ…アぁ!!!!」


圧倒的な力が黎の中に流れ込む感覚と共に、彼はその場でのたうち回ることしかできなかった。


「この、力に耐えた時お前は莫大な力を手に入れるだろう。だが、お前はこの髪が与えた力に耐えられるかな?」


「な、何…ッッッッッ!!」


「じゃあな……」


体が焼けるように暑い、心臓がどくどくと脈打つ。思わず心臓を抑える。

意識が朦朧とする中で、最後に見えたのは去っていく黒いローブを纏った人たちの後ろ姿。

その人たちを眺めながら本日2度目、意識を飛ばした。

夜空には、狼でも出そうなほどオレンジ色に輝いている月が出ていた。

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