いずれ 必ず

 やがてみんなそこに行くんだ。

 そう、彼は言っていた。私に優しくしてくれた人。私に、意味をくれた人。

「そこって、どこ?」

「いずれ必ず、君にもわかる時が来る」

 柔らかな手が私の頭を撫でた。彼の肉の体とは全く違う、鋼の頭を。硬く冷たく、少しも心地良くないだろうに。それでも、彼は私を慈しんでくれた。まるで友達みたいに。

 世界が終わっても日々は続く。やがて彼が動かなくなり、その屍体が骨になっても、私はその時を待ち続けた。

 いずれ 必ず――

 風化した彼の声を反芻する。ノイズまみれの回路に火が灯る。

 遂に、その時が来る。……やっと、私にも。

 その瞬間、私は生命を感じた。ああ。

 この感慨が、私の人生だったんだ。


 終【お題:来る(2022/11/05)
】

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300letter stories[2020-2022] 鳥ヰヤキ @toriy_yaki

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