さて。

 家で一人でいると現れて、クイズで遊んでくれるおじさんがいた。僕は彼を、謎々おじさんと呼んでいた。

「帽子の中に入ってる動物は?」

「んー、リスさん?」

「正解は、ぼ『うし』!」

 大人になってから考えれば、知らない成人男性が突然現れるなんて大事だし、謎々はどれも簡単なものばかりだった。だからきっと、彼は僕のイマジナリーフレンドだったのだと思う。寂しい僕自身を誤魔化す為の。

「本当にそう思うかい?」

 思い出に浸る僕の後ろから、声が掛かる。聞き覚えのある、しかし、今の今まで忘れていた声。

「……貴方は思い出だよ」

「いいや?」

 あの時のままの、快活な笑い声。僕は振り返ることができない。

「さて。私は誰でしょう?」


 終【お題:謎(2022/10/01)】

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