忘却の海
「そうしてどこかへ流れ去ってしまって」
君の声は滔々としていて、安らかだった。
「二度と出会わないことが幸せなんじゃないかな」
お互いの為に。君はそう結んだ。
僕はただ困惑している。だって僕はまだ子供で、君だってほんの少しお兄さんなだけで。こうして楽しい、戯れるような日々を過ごしているのに、どうして、さよならの話をするの?
「さあ。でもきっと、いつかはそうなるだろうから」
いつかの話は今じゃない。僕がそう怒ると、君は笑った。
「その通りだ。ごめんね」
そのいつかは、今なのか。
そう、君を思い出しながら、考える。とっくに過去の人になった君を。
……忘却の海に流れ着く前に、伝えたかった、さよならだったの?
終【お題:流れる(2022/09/04)】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます