【  】

「つまり貴方は、洗脳されていたんです」

 そう、白衣の男に告げられた。部屋の中も、灯りも負けずに真っ白で、目が眩むようだった。

「可哀想に」

 そう、お母さんが顔を伏せて泣いていた。大丈夫ですよ、我々もついていますから、と周囲の人々が母を慰めている。

「ゆっくりとケアしていきましょう」

「神は、乗り越えられない試練をお与えになりません」

「必ず、この子は元に戻りますから」

 そんな言葉が繰り返されている。私は怖くなって、

「ねぇ、私は何をしたの?」

 と尋ねた。

 無言の、無表情の目が幾つも幾つも、私の顔をじっと見た。

 真っ白の景色の中で。

「大丈夫」

 お母さんが笑う。

「私達がついているわ」


 終【お題:洗う(2022/07/02)】

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