山羊の悪魔

 山羊の悪魔はなんでも食べる。なぜなら山羊の悪魔だから。

「ベェ〜」

 可愛らしく鳴いてはいるけど、その子にとっては何でもご飯。貴重な魔術書、呪われた禁書、他の悪魔の契約書。紙であるなら何でも食べちゃう。だからその子は嫌われ者。

 首輪を嵌めろ、鎖で繋げ、八つ裂きにしてしまえ! 魔界は噴火したみたいな大混乱。こんな小さな山羊なのに、とんでもないことをしてくれる。

「いいの、好きにおやり」

 魔女は噂の仔山羊をマントの中に隠して笑う。彼女も、母も、祖母も……ずっと悪魔に便利に利用されてきた。それももう終わり。

「めちゃくちゃにしちゃって」

 魔法の世界なんて、壊しちゃえ。それは小さな、復讐劇。


 終【お題:紙(2022/04/02)】

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