やむなくスキャンダルに走ります

 あらゆる手立てを尽くしたにも関わらず私の電子書籍は売れません。


 そこで私は考えました。


 こりゃ、火をつけるしかないぞと……(笑)。


 そもそも私達個人作家は世間からすればほとんど見分けはつかない存在です。


 その中で目立ちたいのであれば、無視を決め込まれないように毒を吐くしかないじゃないですか。


 毒を持ち、それを胸の奥で育て上げ、自家中毒になりながらも作品として昇華していく。日常には油が撒かれ、そこから香ばしい匂いが立ちこめ、それは「これでもか」と読者や周囲の人間の前で不快な噴煙となって揺れていくのです。


 ……一瞬変なスイッチが入ってしまいましたが、私はあえて半分のインテリゲンチャは笑って許しても、もう半分のクソバカの神経を逆撫でするやうな文章を書き綴りました。


 はっきり言いましょう。天然でもあり計算でもありました。思ったよりも燃えて一酸化炭素中毒みたいになった事もありますが。


 何はともあれ、スキャンダルを起こしつつも一定のクオリティを保った作品をリリースし続けて、それなりの知名度は得る事が出来ました。


 ですが、問題は金です。


 ――どうしてお金が入ってこないのですか。


 まるで博打のやうに、「ええい次こそは」と全財産を賭けて、電車賃もなくトボトボと国道を歩いて行く負け犬のようなキャリアが続いています。


 みなは言うのです。


 「ああはなるな」と……。

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