第2話
私は軽めの夕食を済ませた。
シエナは後片付けをして、部屋を出て行く。後は湯浴みだ。私は衣装部屋に行き、肌着類や夜着用のネグリジェを自身で出す。タオルもだ。
それらを持って、寝室に戻る。奥に行き、向かって左側のドアを開けた。脱衣場のカゴの中に着替え用の衣類を置く。浴室の引き戸も開け、中に入る。確か、お水用の魔石やお湯用の魔石が浴槽の近くにあったはずだ。探してみると、小さなカゴに入れてある。青いのがお水用で赤いのはお湯用だ。二つを取り、蛇口の上にある穴の中にはめ込む。そうしてから、二つある蛇口を交互に捻る。
しばらくしたら、浴槽の排水口に栓をした。掃除はシエナがやってくれている。だから、綺麗なのだが。
少し溜まってきたお湯に手を入れる。ちょっと、熱いかな。けど、かき混ぜたら丁度良さそうだ。手を出して、浴室にてお湯が溜まるのを待った。
八分目くらいまで入ったので、私は蛇口を捻った。水やお湯は止まる。よし、脱衣場に戻ろう。そう思い、きびすを返す。ゆっくりと歩いて脱衣場に戻った。引き戸を閉めたら、いきなりドアが開く。びっくりして肩が跳ねた。
「……あ、お嬢様。お姿がないと思ったら。こんな所にいらしましたか」
「……シエナ」
「もしや、湯浴みの仕度をなさって?」
「うん、これくらいなら私にもできるから」
「お嬢様……」
シエナはため息をつきながら、こちらを見た。
「分かりました、けど。せめて、一言ことわってからにしてください。寝室にもいらっしゃらないから、心配しました」
「ごめんなさい」
「いえ、私も言い過ぎました。えっと、湯浴みをなさるんでしたね」
「そうよ」
「では、お手伝いはさせてくださいまし。お一人でなさると、危ないですから」
ちょっと、過保護だなと思うが。口には出さないでおく。シエナが怒るのは目に見えているしね。こうして、湯浴みを済ませたのだった。
夜着のネグリジェを着て、すぐに就寝した。シエナはいない。ベッドに入り、瞼を閉じる。深い眠りについた。
翌朝、シエナや他のメイドが四人やって来た。テキパキと、私の身支度を手伝ってくれるが。カーテンを開け、私に洗顔用の道具類を渡す。
「……お嬢様、今日はお見合いだと旦那様から聞きました。なので、身支度をしましょう」
「はい?お見合いって」
「やはり、聞いていらっしゃらないわね。お相手はアンダーソン男爵様です。まだ、お若くてお嬢様より、四歳上だとか」
シエナはそう言って、私に洗顔など済ませてくるように促した。仕方なく、洗面所に向かう。歯磨きを済ませ、洗顔もする。出たら、次は夜着を脱がされた。メイドが二人がかりで肌着類を身に付けさせる。
そうしたら、コルセットも装着した。ギュウギュウに胴体周りを締め付けられる。これだけは苦手だ。あまり、食事もとる事ができないし。
幾枚ものパニエを重ね、最後に淡い紫色のタートルネックに長袖のドレスを着せられた。襟元や袖口に控えめに、レースが使われている。可憐ながらに、上品な仕上がりだ。
シエナが手早く、メイクを施す。薄いながらに地味過ぎない程度にだが。ヘアアップもしてくれた。香油を髪に塗り込み、丁寧にブラシで
サイドを編み込み、髪紐で纏める。
アメジストの小さな宝石が散りばめられたヴァレッタで留めたら。身支度は完了した。
「さ、できました。お嬢様、エントランスに急ぎましょう」
「分かった、アンダーソン男爵様だったわね。行きましょう」
私はシエナと二人で、エントランスに早足で急いだ。残ったメイド達がびっくりしていたのには気づかなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます