第4話
午前中の授業がやっと終わった。
小泉さんのおかげで、午前中の授業をなんとか乗り切ることができた。残る三時間も乗り切らないと。
「ねえ、一緒にお弁当食べない?」
「モチ!」
教師が教室から離れると、後は楽しいお昼休みだ。
机をくっつけては互いに弁当を広げる女子生徒も居れば、定食目当てに食堂へと向かう生徒も居る。
僕はというと、小泉さんから指示された通りに自分の弁当箱一式を手にして、隣のクラスへ向かった。
「ここまで小泉さんが手はずを整えているから、後はなるようになる」
確か隣のクラスって、女子専用のクラス……、で合っている、よな。
僕はもう一度深呼吸をしてから、二組の教室の扉をノックしてこう言った。
「すみません、三組のものですがここに高橋さん……、いえ、高橋奈津美さんは居ますか?」
僕が声をかけると、教室の中から平凡そうな見た目の子が出てきた。彼女に二言話しかけると、その子はすぐにどこかに向かっていった。
さすが女子専用クラスだけあって、周りは女子ばかりだ。僕たちのクラスは男子と女子の比率がほぼ一対一なのに対して、ここのクラスは周りを見渡す限り女子高生ばかりだ。
割と普通そうな生徒も居れば、中には――。
「優汰君、久しぶりだね」
ハイスペックな美人も――と思ったら高橋さんが目の前に居た。
サラサラのロングヘアーに僕とほとんど同じ目線、マシュマロのような胸。そして、ブラウスの下からはちょっと派手な柄の下着。
季節柄からかそうなるのは仕方がないけど、今まで柚希しか知らなかった僕としては十分刺激的だ。
「お久しぶりです。お元気でしたか」
「もちろんだよ。……って、相変わらず敬語じゃないの? 私たち同級生でしょ、畏まらなくてもいいからさ」
そう話すと、高橋さんはここ最近幼なじみの笑顔を見たことがない僕にとって眩しすぎる笑顔を見せてくれた。どこからどう見ても年上にしか見えないよ、これだと。
「そう……だね。小泉さんからお礼がしたいって聞いたからわざわざここに来たんだけど」
「うん、今朝になってカノンから
あの後、小泉さんはスマホを開きながらひたすら何かを打ち込んでいたけど、まさかこういうことだったのか。
「それで、これからどうしようか」
「ん~、ここのクラスで一緒にお昼なんてどう? って思ったけど……」
高橋さんは教室を見渡すと――。
「やっぱり、君の居るクラスに行ってみたいな」
僕のほうを向いては片目でウィンクを飛ばした。
……待てよ、今はお昼休みだよな。僕の前の席は、あの菅野だったはず。
あいつ、いっつも幼なじみのことをバカにしていたよな……。「
「それだけはカンベンして!」
「えっ、どうして嫌がるのかな?」
「だって、アイツが居るんだよ。クラスに居る女子の大半が白い目で見ている菅野が」
菅野は太っていて色黒でモブ顔と、クラスの女子からは嫌われている印象がある。その一方で写真の腕は確かで、写真部では夏の甲子園の予選の模様を写真に収めるなどして徐々に頭角を現している。
ただ、アイツと高橋さんを引き合わせるのはどうなのだろうか。アイドルのような可愛らしい顔立ちと欧米人も真っ青のプロポーションを見て鼻血を出して一発で倒れるぞ。それに、なんて言われるかわかったもんじゃない。
「ふ~ん。でもさ、菅野君って意外と悪くないと思うよ? ほら、人は見た目じゃないって言うし」
「やめときましょうよ! ほら、弁当も持ってきていますから……」
「う~ん……」
高橋さんは手を顎にあてて、ちょっと考え事をしたと思ったら――。
「よし、決めた!」
えっ、手を叩いて一体どうしたんだ、高橋さん。
うちのクラスにはマズい奴が居ることをわかってくれたのか。
「君のクラスにお邪魔するね。弁当を取ってくるから、ちょっと待っていてね」
本気かよ! うちのクラスには小泉さんと菅野の二人が……、と思ったら、小泉さんはお昼休みの間はずっと軽音楽部の部室に居るって言っていたな。
いつもは母親の手作り弁当を教室でモゴモゴ言いながら食べている菅野は「すまん、ちょっと行ってくるっス!」と一声かけてから休みに入った途端教室から出ていった。
小泉さんならばともかく、菅野が居ないのであれば好都合だ。あとは戻ってこないことを祈りながら――。
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