第2話ルドラ大森林に行ったら大熊いたので木になります

ルドラ大森林についた。


ここまでいろいろあった...。


せっかく準備してきた食料を落として来たり、動物を狩る罠に自分が引っかかったり...。




「・・・でも、ここからが本番なんだよなぁ・・・。」




目の前は、どこを見渡しても緑。


今から、自分はどこにいるのかも分からない「大熊」を探し、仕留めなきゃいけないのだ。


とても約15歳にやらせることではない。


やはり、あの親父はボケ始めているのではないのだろうか。


いつも「稽古」などと言って俺を殴りつけてくるし、部屋でゴロゴロしようと思ったら、


「勉強しろ!」っと言って、勉強道具と机しかない部屋に閉じ込めるし・・・。


あれ・・・?これもしかしてボケてるのではなく、単純にイカれてるのでは・・・?


そんなことを思いつつも、森に入る。


適当にこの辺で時間をつぶして、「倒してきたわ。」とか言って


帰ってもいいのだが、親父にバレたときが怖いのでやめておく。


ちなみに、このルドラ大森林は俺の住んでいる村、ケンプ村の南に位置しており、


魔物もでるので基本は冒険者などでないと入ることができない。


しかも、でてくる魔物の魔物ランクはD~C!


Cランクともなると、中級魔法を使わないとかつことが難しいのである。


つまり、初級魔法しか使えず、剣も使えない俺は、勝つ可能性がほぼゼロなのだ!


さらに、初級魔法と言っても魔導書で読んで、覚えた独学である。


さぁ、どうしましょ!




なんやかんやで森を進んでいると、腹の音が鳴った。




「腹も減ったし、休憩するか。」




そう言ってバッグを開けるも、自分が食料を全て落としたのを思い出した。




「・・・どうしよう。」




このままでは、「大熊」に殺られる前に、餓死してしまう。


苦しんで死ぬのだけは、絶対にお断りなのである。


殺されるのならスパッといきたいな・・・。


その時、後ろの茂みでガサッという音がした。


ぴょんぴょん跳ねる小さな動物―ウサギだ。




「よし、今日の飯はアイツだ!」




そして、俺はウサギに対し、右手をむける。




『火球!』




拳と同じくらいの火の玉がウサギに向かっていく。


だが上手くコントロールが定まらずウサギの足元に命中。


ウサギはびっくりしてしまい、茂みの方に逃げていく。


だがそれを逃がす俺ではない。


今は生死がかかっているのだ。やすやすと、見逃すわけには、いかないのである。




「待てー!肉ーー!」




俺はそう叫び茂みの中に入っていく。


すると、前にある壁のような、なにかとぶつかる。




「痛っ・・・くない・・・?」




いやなんなら、モフッとしてたような・・・?


俺はその正体を見るべく、上を見上げる。


すると、俺を完全に「獲物」と見なした目が合う。


・・・大熊だった。




「グオウゥウウウ!ガルルルウゥウ!」




おっと・・・。完全に俺を殺っちまう目をしてるなぁ・・・。


俺は逃げ出したい衝動に駆られるも大熊に背中を見せないようにする。


うーん・・・。どうしたものか?動いたら多分殺しにくるからなぁ・・・。


俺は脳をフル回転させ、この状況を打破する作戦を考える。


その時、俺の頭に、ある作戦が思い浮かんだ。


その名も「木になる作戦」だ!


なぜ木になるかには、理由がある。


俺は、親父に見つからない為に、散々隠れる練習をしてきたのだ。


そして俺は、遂に木と化した!


つまり!俺は木なのだ!


俺は体の力を抜き、気配をなくす。


大丈夫・・・。俺は木・・・。俺は木・・・。


そう心の中で念じる。


・・・よし、今、俺は完全に木だ!


俺はそう確信し、大熊を見る。


もう俺を木と思っているはずだ。




「グウガアァアアアアアア!」




そう叫び俺に向かって噛みつこうとしてくる。


俺の作戦は無意味だったようだ。


その瞬間、脳内に今までの俺の人生の記憶が流れ込んでくる。


(これが走馬灯と言うものか。)


そんなどうでもいいことを考えながら、俺は親父を恨む。


マジでなんでこんなとこに行かせるんだよ・・・。


そして、もうすぐそこまで来ている大熊の顔を見て目を閉じる


あぁ・・・。せめて噂に聞く「都会」に行ってみたかった。


来世では行ってみたいな・・・。


俺はそこで思考を止め、力を抜く。


・・・だがしばらくしても、痛みは来なかった。


少し不安になり、俺はそっと目を開けた。


そこにいたのは、丸焦げの大熊と、スラッとした青年だった。




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