真剣勝負では勝てないのでウソ技連発します
@yamamotoreo
第1話親父に命令されたので仕方なく大熊倒しにいきます
この世界では生まれながらに自分だけが使える魔法、固有魔法をもつ者が何年かに一度生まれてくる。
固有魔法は生まれた時にしか、獲得できず、成長につれて獲得できるものではない。
どの固有魔法も強力であり、王国お抱えの騎士団などは固有魔法持ちが数人在籍していたりする。
だからと言って固有魔法を持っている者以外、強い者がいない、というわけではなく、
普通魔法や、剣の腕前で騎士団の団長を務めている者もいたりする。
なんなら今のバスタル王国のお抱え騎士団は普通魔法の使い手である。
普通魔法の中でも上位魔法は習得するのが難しい分、固有魔法を軽く超える程、
強力な魔法があったりする。
だがやはり、固有魔法は変則的なものが多く、どんな強者であっても苦戦を
することが多い。
俺、レオン・シューディアスも固有魔法持ちだった。
...ただし、へっぽこで、『ハッタリ』な固有魔法だが...。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
目の前に、ある男が座っていた。
その人物は、この村の英雄であり、俺の頭の上がらない人物であり、俺の親父でもあった。
すでに、60歳を超え、今ではこの村、ケンプ村の村長になっている。
その歳に似合わない筋肉を全身につけ、片手に酒を持ち、一口グイッと飲み、正座をしている俺に
話しかけてきた。
「おい、レオン...。お前、今いくつになった?」
その声には、怒り、不満が込められており、緊張している俺にズシリと乗っかかってきた。
「じゅ..15...です。ら..来月から...。」
「そうだよな。じゃあそろそろ、この「魔法水晶」を使った「成人の試練」も、もうしなければいけないよな?」
そういって親父は透明な水晶を俺の前に、ゴトンッと置く。
先ほど親父の言っていた「成人の試練」とは「試練」とは言うものの、ただ
この「魔法水晶」に手をかざすだけである。
そうすると、水晶の色が変化し水晶に手をかざした者の得意な系統の魔法を示してくれる。
赤なら火、青なら水、みたいな感じだ。
俺には、この「試験」を絶対にやりたくない理由があった。
俺は、得意な魔法、及び中級魔法以上の魔法が使えないのだ。
え?なんで分かるのかって?
答えは簡単、俺は2年前、この水晶を親父に隠れて使ったのだ。
その時、水晶が示した色は...透明。変化なしだった。
つまり、俺は得意な魔法が無く、初級魔法しか使えないのだ。
そういう者も、たまにはいるのだが、そういう者たちは基本、剣士になったりするのだ。
え、お前も剣士になればいいじゃないかって?
馬鹿言っちゃいけねぇ。
俺は剣どころか包丁を持つことにさえ、恐怖を感じるのだ。
剣士なんて夢のまた夢である。
まぁ、そんな事情もあり、このままでは俺は親父に
「情けない。お前はこの家から出ていけ!」
などと言われてしまう。そんなことにはなりたくない。
だから、俺は恐る恐る口を開く。
「お...親父。それは来月の俺の誕生日でもいいんじゃ...ない..かな?」
親父は俺の顔をじっと見つめてくる。
(あ、おわったぁぁ~~~。これ、このまま追い出されるコースだぁぁ~。)
そう絶望していたが、その予想は外れることになる。
なぜなら、この時、親父が予想外なことを言い出したからである。
「うむ。それもそうだな。
そんなことより、お前に一つ頼みがある。」
と、言ってきたのだ。
(えぇぇぇぇぇぇ!!ここで俺の意見を聞くなんて、どうなってるんだ?
いつもならずっと圧をかけてくるのに!)
そんな驚きと、逃げ切れた喜びで俺はハイテンションになっていた。
だが、次の言葉を聞き、また絶望することになる。
「南のルドラ大森林に住んでいる『大熊』を仕留めてきて欲しい。」
この言葉に俺は顔を青くする。
なに言ってんだ、このおっさん?
もうボケ始めたのか?
「大熊」って魔物ランク「c」だよ?
あ、俺に死ねって言ってるのか。あぁ~そゆことね。はいはいはい...。
「いや無理だよ!」
俺は人生で一番と言っても過言ではない程の大声をだした。
そりゃそうである。俺の人生の危機なのだから。
そんな俺の返答を見透かしていたかのように、親父がニヤッと笑う
「お前が散々嫌がっていた『成人の試練』、無しにしてやってもいいぞ。」
「いや...だからってそれは...」
「あ?」
「やります!やらしてください!」
そして俺は2日後、ルドラ大森林に向かうのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
先日、あり得ないようなことを妻に言われた。
「レ...レオンが火の上級魔法の『真大・大火球』
を打ってたわ...。」
「はぁ?」
妻はどうしてしまったのだろうか。約15歳にして上級魔法を打つなんて聞いたことがないぞ。
最近働きすぎてるのかもしれないし、今度ゆくっりしてやる時間でもつくってあげよう。
「ほ...本当なのよ。あの子が隠れて魔法の練習をしてたから、こっそり見てたら
いきなり上級魔法を打ちだして...。」
そう言って、妻は俺に信じてもらえないことに、しょんぼりしていた。
この反応をみるに、ウソはついていないのだろう。
俺は、妻を信じることにした。
だがやはり本当にレオンは上級魔法を使っていたのだろうか?
俺はそれを確認するために、レオンを呼び出し、「大熊」の討伐を命じた。
もし本当は使えなかったのなら、レオンは死ぬかもしれない。
でも、これも愛のムチだ。それに、レオンはなんだかんだで帰ってきそうだ。
なんてったって、俺の息子だからな!
頑張れよ、レオン!
この、レオンの父、キョジーンの予想はあっていた。
本当にレオンは上級魔法など使えなかったのである。
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