file4前編「イジメ」
20XX年3月9日
2年前、日野は水森東高校に通っていた。人望もそれなりに厚く、充実した学生生活を送っていた。
…日野には重大な欠点があった。
『いじめ癖』だ。常に誰かをいじめていないと無性にイライラした。彼にとって標的は誰でもいい。
スクールカーストの底辺から“狩っていく”。と当時の同級生は語っていたようだ。
そんな彼は遂に一線を超えてしまった。そう。殺人だ。まあ厳密には殺人では無いのだが。
いじめていた生徒が自殺してしまったのだ。その生徒はご丁寧に遺書まで書いていて、日野に受けた日々の苦痛が紙一面にびっしり書かれていた。彼のパソコンには録音されたいじめの音声、映像が100件以上保存されていた。当然裁判が開かれるのだが、第一審、無罪判決。第二審、無罪判決。遺族は心身の疲労から裁判を諦めた。証拠が揃っているのに何故有罪にならないのか。私は裏で金が動いているとしか考えられなかった。何が司法権の独立だよ。
そんな日野だが、今は水森の郊外でのうのうと暮らしているらしい。最近親が死に、やりたい放題のようだ。今日は非番で暇なので私は遊んでみることにした。私は水森町郊外へ向かった。
ピンポ-ン
??「はい?」
原田「こんにちは」
日野「客とは珍しいね。何の用だい?」
原田「ブログ見てきたんですけど、高校のこと教えて貰えますか?」
日野「へぇ。あのブログに食いついてくるやつなんかまだいたんだ。」
日野は無罪判決を貰ってからブログにした事を書き連ねていた。それも、細かく。当初は話題になっていたようだけど、今はもう世間も日野も飽きてしまったようだ。はっきりいって胸糞悪い。
原田「最近ご両親もなくなってしまったみたいなので。ゆっくりお話できるなって思って。」
日野「まじかこいつ。俺と同じ気質を感じるね。」
原田「そこまでじゃないですよ。」
日野「じゃあ近くの喫茶店…はマズイか。家でよかったら上がってよ。」
原田「喜んで。お邪魔します。」
日野の家に入る。
日野「早速話していこうか。」
原田「あっ。私、お土産を持ってきたんです。手作りなんですけど。気に入って貰えると嬉しいです」
日野「おっ。いいじゃーん!そういうの。嫌いじゃないよ。」
日野「クッキーか。なかなかいい趣味してんね。」
原田「ありがとうございます。」
日野「あと、敬語やめない?堅苦しく感じちゃう。」
原田「わかった。」
日野「じゃあ、お茶入れてくるね」
私はクッキーに睡眠薬を入れた。次第に眠くなるので、気付かれにくい。ってサイトに書いてあった
丸型のクッキーには睡眠薬が入っている。なので大皿に出してくれると、助かるのだが。
日野「お待たせ。話していくぞ。」
原田「うん。」
今日はついてるな。大皿に出してくれた。
日野「〜〜〜〜〜〜〜」
ぶっちゃけ話は聞いていない。適当に相槌は打ってたけども。
日野がクッキーに手をつけた。丸型のを食べたからもうすぐ寝るはずだ。
日野「〜〜〜〜〜〜だったんよ。あいつが悪いよな?」
原田「そう思う。」
敬語も慣れないからやだな。早く寝てくんねぇかな。
日野「はーあ。久々に人と話したから疲れちゃった。」
原田「まじか。」
日野「起きたら電話するから、それまでその辺で時間潰してきてよ。起きたら続きも話すからさ」
こいつマイペースすぎるだろ。客より欲を優先するとか。いかれてんな。
原田「わかった。」
30分後
原田「さすがに寝付いたろ」
日野「zzz」
原田「よしきた」
まずはどうやって痛めつけるか。取り敢えず起きたら困るし拘束しておくか。
原田「睡眠薬ってのはすごいな。全く起きない」
被害者にやっていたことをやるか。…ええっと?性的暴行?恐喝?なんやこいつ。ろくなことしてねぇな。第一寝ている相手にやったところでなんの面白みもないじゃん。
…そうだ。“アレ”をしよう。
1本1本指を切り落としていく。簡単かつ非道な方法だ。どっかでみた。
ポイントは、すぐ切るんじゃなくてゆっくりやること。これもどっかで見た。
原田「久々な大仕事だな。じゃあ早速やっていこう。」
左手の指を全て切り落としたタイミングで奴は目覚めた。
日野「!? なにしてんだ!痛い痛い痛い!」
日野「俺の指が。」
日野「おい!拘束を解け!どうなるか分かってんだろうな!」
無視が1番人に応えるのを私は知っている。私は黙々と“作業”を続けた。
しかし、思ったより眠らないな。30分くらいか。まあそんなもんか
脚も手も無くなった時も日野はよく吠えていた。生命力すごいな。
日野「お願いします。何でもしますから。助けてください。」
原田「ん?今なんでもするって?…じゃあ少しだけ話を聞いてもらおうかな。」
日野「なんだよ。。。」
原田「捜索願って、何日で届くかで人望が分かるんだってさ。」
日野「は?」
原田「人望が厚い人はすぐに出されるし、逆はいつまでも出されないかもしれない。」
日野「どういうことだよ」
原田「君の捜索願は何日で出るかな?」
日野「おい。やめろ。死にたくない。」
原田「うるさいな。」
日野「く、狂ってる。」
3月10日
水森警察署
原田「おはよーございますーってあれ?小野先輩1人?」
小野「おはようございます。ええ。この部署の人間は全員現場に向かっています。」
原田「なんかあったんですか?私ニュース見ないので。」
小野「そうですか…取り敢えず車で説明するので乗ってください。」
車内
小野「鷹山唯斗ってタレント知ってますか?」
原田「ああ。ニュース番組のMCやってる人ですかね」
小野「そうです。その人なんですが。」
原田「どうなったんですか?」
小野「自宅でバラバラになっていたそうです。恐らく、凶器は日本刀と見られています」
原田「日本刀なんて凄いですね。でもテレビに出るタレントなら護衛とか、警備とかいないんですか?」
小野「そんなのはフィクションの中だけですよ。よっぽどの大物でもない限り、生活も不安定で大して楽じゃないでしょうね。」
原田「へぇー」
小野「着きましたよ。」
マンション水森
佐伯「おっ。来たみたいね。」
原田「なかなかいいところに住んでたみたいですね」
佐伯「現場、なかなかに酷いわよ。」
原田「えー見たくないですよ。そんなこと言われたら。」
佐伯「ごめんごめん。でも見ないと始まらないから。」
原田「そうですね。私は井戸田の警察じゃないんで、ちゃんとみますよ。」
鷹山の部屋へ入ると私は驚く。
原田「うわぁこれ酷いですね。部屋中血塗れ。」
佐伯「ここが井戸田町じゃなくて良かったよ。」
結城「この現場の不可解なことは何も犯人の情報が残っていない事だ。」
原田「監視カメラとかもないんですか?」
結城「ああ。そこは鷹山の謎のこだわりがあったそうだ」
原田「何その変なこだわり」
佐伯「一応第一発見者のマネージャーの家に行って凶器がないか確かめてるけど」
結城「まあ無いだろうな。日本刀は素人に扱える代物じゃあない」
原田「原因はなんなんでしょう」
結城「さあな。多分この事件は長引くぜ。」
小野「一通り作業が終わったら今日は帰っていいそうです。」
佐伯「なんかパッとしないなぁ。手がかりもないし」
結城「ここのマンション、まあまあいい物件だったのに一瞬で事故物件に早変わりだ。可哀想にな。」
原田「クヨクヨしててもなんも変わんないですよ。帰ってリフレッシュしましょう」
佐伯「そうだね。絶対犯人を見つけ出そう。」
File4前編 終
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