file3「拉麺」
原田「先輩〜これみてくださいよ」
佐伯「んーと、どれどれ」
原田「これですよ、めちゃ美味しそうですよ」
莉々ちゃんが見せてきたのは最近駅にできた店の宣伝写真だった。
どうやらそこはバーみたいな雰囲気で、お肉をお酒の肴に食べるらしい。
佐伯「なにこれ。すごい上品な感じだね。」
原田「大して値段も張りませんよ。今度行きませんか?」
佐伯「いいね」
結城「おお、おはよう。なにしてんの?」
原田・佐伯「なんでもないです」
結城「なんだよ。教えてくれてもいいじゃないか」
原田「部長はお酒飲めないのでダメですよ。」
結城「ははは。そうか。最近は平和な話ばかりでいいな。」
原田「月初めはバタついてましたもんね」
小野「みなさーんいらっしゃいますか?」
結城「なんだ?どうした小野」
小野「拉麺日生で倒れた人がいるそうで」
結城「ただの食中毒じゃないのか?」
小野「それが、外部からの毒らしいんですよ」
佐伯「誰かが入れたってこと?」
小野「恐らく。早く現場に行きますよ。」
拉麺日生店内
検察「事件当時に店内にいた人は残しています。」
結城「そうか、ありがとう。佐伯、聞き込み頼んでいいか?」
佐伯「もちろん!得意分野なんでね」
被害者
千葉源 チバゲン 61才 常連客
容疑者
日生孝介 ヒナセコウスケ 49才 ラーメン屋店主
田中賢 タナカケン 78才 常連客
飛鷹巡 ヒダカメグル21才 大学生
江田晶 エダアキラ 21才 大学生
野田優子 ノダユウコ 38才 主婦 +子供 麻衣 10才
佐伯「(こんなところかしら)」
佐伯「まず日生さんからね、事件当時、何をしていたか教えて貰えますか?」
日生「お客さんもいるし、ラーメンを作っていたと思います。」
佐伯「なるほどね。まあ予想はしていたわ。スープや麺はいつもと違うところはなかった?」
日生「特には。麺もスープもこだわりなので、作り方がコロコロ変わることは無いです。」
佐伯「すり替えられた可能性は?」
日生「開店の少し前に味見をしているので、すり替えられたとしたら、その後ですね。」
日生「でもうちのスープは門外不出のレシピで作っているので、スープは誰も作り方は疎か、材料も知らないはずです。知っているのは僕1人。」
佐伯「千葉さんはどんな客でしたか?」
日生「あまりいい客とは言えませんでした。新規さんに余計なことを言って戸惑わせていたので。」
佐伯「なるほど。ありがとうございました。次は田中さんを呼んできてもらえるかしら」
佐伯「田中さん、事件当時は何をしていましたか?」
田中「お主、ワシを疑っているのか」
佐伯「必要な情報を聞き出してるだけです」
田中「わしはいつも通りラーメンを食って、食い終わったらそこのテレビで競馬を見てた。」
佐伯「なるほど。何か変わった様子はなかったかしら?」
田中「特には感じなかったな」
佐伯「千葉さんとの面識は?」
田中「あるにはあるが、対していい思い出は無いな。」
佐伯「それはなぜ?」
田中「意見が合わないんだよ。ここのスープの味は醤油が美味いのに塩が最高とかほざきやがる」
佐伯「確かに、話題になってたのは醤油だったわね。」
田中「しかもあいつ、出汁を全くわかってねぇ。ここのは豚骨と鰹だしベースなのに、鶏ガラとか、ww」
佐伯「もう大丈夫ですよ。次の人を呼んできてください」
佐伯「飛鷹さんと江田さんはどういう関係ですか?」
江田「あっ、恋人です。」
佐伯「なるほど。なぜ今日はここに?」
飛鷹「KINSTAGRAMとかkwitterとかで紹介されてたから…」
佐伯「最近話題でしたよね。事件当時は?」
飛鷹「ラーメンを食べていたら、いきなりあの人が倒れて、、」
江田「怖かったです。」
佐伯「ふーん。面識もないみたいだし、もう行っていいわよ。」
佐伯「千葉さんと面識があるみたいね」
野田「はい」
佐伯「教えて貰えるかしら?」
野田「千葉さんは昔、うちの子供をつけて歩いてました。それも、何回も。」
佐伯「ほうほう。続けてください」
野田「警察を呼んで、接近禁止命令を出してもらいました。けど、今日ここでばったり会って…」
佐伯「偶然あったって言う事ね」
野田「はい、逃げるのもお店に悪いし、我慢していました。」
佐伯「そのあと、倒れたと…」
野田「怪しく見えちゃいますよね…。けど、ほんとにやってないんです。関わりたくもない。」
佐伯「なるほど。ありがとうございました。」
佐伯「私の目から見ると、あのカップルは無いかな。」
小野「話を聞く限り、同意見です。」
結城「ああ。一旦除外しよう。」
佐伯「被害者は周りからあまり好かれていなかったようね」
原田「問題行動が目立っていた。ということでしょうか」
結城「このままじゃ断定はできないな。鑑識の結果はまだか?」
佐伯「まだですね」
結城「クソ!もどかしいぜ」
佐伯「(何かが引っかかる。けど、何かが分からない)」
私は何度も聞き込みのメモを読み返した。が、違和感の正体が分からない。
小野「ちょっと待ってください」
佐伯「はい?」
小野「ここのスープは門外不出で店主以外材料もしらないんですよね?」
「なぜ彼は出汁を断定できているのでしょうか」
佐伯「本当だ。相当な舌を持っているのかもしれないけど。」
小野「ここは1発カマをかけましょう。材料に関することを聞き出しましょう」
小野「ボロが出たら詰めましょう」
佐伯「私がやります」
小野「頼みますよ」
佐伯「あの。田中さん。」
田中「ワシが第1候補っちゅーことか。悪いけど、ワシではないぞ」
佐伯「いやいや。ここのラーメンのことですよ」
田中「おっ興味あるか?」
佐伯「わたし、1回ここ来たかったんですよね。なんでもスープが美味しいとか。」
田中「そうなんだよ。さっきもいったが、豚骨と鰹の相性が抜群でさ!」
田中「豚骨2 鰹1の割合がいいんだよ。」
佐伯「ほぇー私味音痴だからわかんないの。もっと教えてくれるかしら。」
田中「隠し味を知ってるか?」
佐伯「そんなのあるのね。」
失言を誘い出す。
田中「高いブランド物の料理酒を使っているんだよ。これは俺が昔食品会社に勤めていた時に、前の代のおっちゃんにこっそり教えてもらったんだ。だから今の兄ちゃんは知らないはずだ」
…読みが外れたようだ。ただの知識人だった。
佐伯「なるほどね。ありがとう」
田中「おうよ。機会があったら今度1杯奢ってやるぞ。」
佐伯「楽しみにしてるわ。」
小野「読みが外れましたね。」
佐伯「田中さんはまだ白では無いけど犯人の線が薄れたわね」
原田「全く、分かりません」
結城「みんな、見てこれ、容疑者の家族構成だ。」
小野「見せてください。」
佐伯「田中さんは妻と二人暮らし、日生さんは独身で一人暮らし、野田さんは夫と子供と3人暮らし…」
結城「俺は野田さんで間違いないとみている。」
原田「何故ですか?」
結城「彼女の夫は科学者だ。そして家から毒物が消えているといまさっき夫から通報が入った。」
佐伯「でも、証拠がないですよね。」
原田「ばったり会ったっぽいですし」
結城「そこなんだよ。どうやって彼女を問い詰めるか。」
麻衣「あの、けいさつのみなさん。」
原田「あっ。ダメだよ入ってきたら。」
麻衣「はんにん、わたしなんです。」
一同「!?」
麻衣「あのおじさんがきもちわるくて、ぬすんだおくすりをおじさんがといれにいったすきにいれたの」
佐伯「…筋も通ってる。入れた毒物の名前はわかる?」
麻衣「んーと。しあんかりむ。みたいななまえだった」
結城「シアン化カリウム?青酸カリか?鑑識に電話しろ。」
小野「お母様をよんできて貰えますか?」
麻衣「わかった。」
佐伯「…との事なんです。」
麻衣「ままごめんなさい」
野田「なんてことを…本当にごめんなさい。私が目を離した隙に…」
佐伯「理由も理由だし、仕方がないと言えば仕方がありません。」
野田「でも…麻衣はどうなるんですか?」
佐伯「今はなんとも言えませんが、裁判の結果次第では、然るべき施設にはいるかもしれません。」
野田「そんな…」
佐伯「今回のケースでは、何とか施設行きは免れるかもしれないですがいくらお金を取られるか…」
野田「ああ…お金はいくらでもあるんです。ですが、この子が人を殺してしまったのはお金で解決できる問題では無い。私はどうすればいいんですか?」
佐伯「今は家族のことを考えて話し合ってください。あと、危ないものを手の届く所に置いておくのもやめましょう」
結城「佐伯、死因が青酸カリによるもので確定した。」
野田「…そうですか。」
佐伯「では、お母様は警察署に来て手続きをしてください。」
野田「分かりました。」
水森警察署
原田「それにしても、野田さんは不幸でしたね」
佐伯「うん。こういうのはなくして行かないと。」
原田「元々、被害者の千葉さんがいなければこんなことにはならなかったのに。」
佐伯「ん?どうしたの?莉々ちゃんらしくないね。」
原田「いや、なんでもないです」
佐伯「そう?私は今日は早く帰って寝る!莉々ちゃんバイバーイ」
原田「お疲れ様でした。」
倉庫
原田「この世界に悪者はいらない。」
小野「どうしました?原田さん。昔の事件のファイルなんか漁って。」
原田「いや、なんでもないです。少し昔のことが気になって。」
小野「そうですか。夜も遅いですし、気をつけてくださいね。」
車内
原田「水森には悪が居る。徹底的に潰さないと。なんのために警察なったんだよって話だよね笑」
原田「まずはこいつか。覚悟しとけよ。日野祐介。」
File3終
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