第3話:ナルベク簡単ニオ話シシマス

――練馬区光が丘、安達家

 光が丘東大通りを川越方面へ進み、小学校に差し掛かったところの交差点に入った先に安達歩の家はあった。

 安達家はこの辺りの地主である上田家の好意で離れの一軒家を借りて暮らしていた。

 元々この離れは当代大家であり真理の親友、上田えりなが結婚した際、二世帯住宅用に建てた家であったが、先代が急逝したため空き家となっていたものである。

 重厚な佇まいの母屋と比較するといかにも安上がりな規格住宅であるが、当時アパート暮らしであった真理はえりなの提案に飛びつき、永く持ちつ持たれつの関係を続けている。

 共用の広い庭兼駐車場の安達家分には、昨晩の事故でフロントグリルとバンパー、ボンネットを凹ませたスカイラインが停まっている。

 その安達家であるが歩の部屋は二階、母屋に隣接する場所にあった。

 タイマーによりエアコンは一時間前に切れ、真夏の日差しに当てられた建物が住人の身体から汗を噴出させるほど温められた頃、昨晩の騒動から無事生還し泥のように眠っていた安達歩は暑さによって睡眠を中断させられた。

「あー、くっそあちぃ……」

 目が覚めた歩はあくびをしながらエアコンを点け直す。

 頭を搔きながら時間が昼過ぎなのを確認すると、来客の予定を鑑みて二度寝を諦めることに決めた。

「オハヨウゴザイマス」

 合成音声のする方に視線を動かすと、勉強机に鎮座する人型の機械の塊の姿があった。

 その機械の塊はフレームとそれを動かすモーター類、バッテリーが剥き出しの姿をしており、工学に明るくない歩でもこれがなぜ動いていて、そしてまるで生きているかのように振る舞えているのか不思議でならなかった。

 一晩明け、改めてロボットの姿を確認した歩は、昨晩の自らの行いを悔いるように、手で汗ばんだ顔を拭った。

「……まぁ、夢じゃないよな」

 テレビを点けてニュースが流れているチャンネルまでザッピングする。

『引き続き昨晩深夜、新宿歌舞伎町で起こりました銃乱射事件についてです』

『昨晩深夜、東京都新宿区歌舞伎町にて、指定暴力団、雲雀任侠会構成員と思われる集団と、人類統治共和国系マフィアグループ、黒龍商会と思われる集団による発砲事件が発生しました』

 丁度昨晩の騒動に関するニュースが流れていたチャンネルを見つけて、リモコンを操作する手を止めた。

『この事件により黒龍商会所属構成員、チン・ケンミン氏とシュウ・フゥア氏、そしてこの事件に巻き込まれたと見られるインド国籍の男性、シュルティ・ウパニシャド氏の遺体が今朝、事件現場付近の大久保公園にて発見されました。警視庁は事件の全貌を調べるとともに、当事件が両組織の抗争に発展しないよう注意喚起していく方針です。シュルティ氏の遺体についてですが、警視庁は検屍が済み次第、遺体をインド大使館へ引き渡すとの意向を示しました。また事件当時歌舞伎町監視カメラの映像によりますと、シュルティ氏に同行する女性の姿が確認されており、警視庁はこの女性の行方についても捜査を続けていく方針です』

 ニュースの内容から察し、勉強机に鎮座するそれと見比べる。女性と目されている人物の中身がこれだ。

 当分見つからないのではないかと歩は思った。

「ソロソロ頼ンダ部品ガ届キマス。組ミ立テヲオ願イシマス」

 騒動の中心人物はそんな都合など我関せずと言った具合に歩へ指示を出した。

「はぁ!? いつの間に買ったんだよ。って言うかお前、金は?」

 汗で湿ったシャツを脱ぎ、そのまま手拭い代わりに身体を拭いていた歩は唖然とした。

 昨晩歩たちはこのロボットを車に乗せそのまま帰宅した。

 帰路の道中、ひっきりなしにスマホを弄っていた真理は、自宅に到着するとそのまま自室に籠ってしまったため、歩は仕方なくロボットの指示通り自室に運び、自分のパソコンとロボットをHDMI端子で接続した辺りで力尽きていた。

 まさか自分が寝ている間にロボットが自分で修理部品をネットショッピングするなど、彼は思いもよらなかった。

 歩が問いただすと、ロボットは壊れていない方の腕でパソコンを指差す。

 そこにはネットバンクの口座画面が表示されていた。

「私ハ私ガ自由ニ使用シテ良イ口座ヲ所有シテマス」

「ロボットの癖に俺より金持ちなのかよ」

 画面にはゼロが6つ並んでいる。しかもドルである。

 歩は目の前のスクラップより貧乏な自分を呪った。

「んで? アンタたち、一体なにやったんだ?」

 そう言いながら飲みかけのペットボトルの中身を呷った時、インターホンの音と自分を呼ぶ声に気付き、会話を中断した。

「あー、ヨウさんたちだ。クソッ、タイミング悪ぃな」

「ドナタデショウカ?」

「刑事やってる人だ。大人しくしててくれよ」

「ワカリマシタ」

 歩は急いで替えの服を着ながら、ロボットに簡潔に来客の説明をして、部屋を出る。


 歩が階段を下りた先には、赤羽耀司と桐谷純仁が大量の段ボールの荷下ろしを手伝っているところだった。

「よぉ歩、今日も暑いなぁ」

「歩くんおつかれー。すごい荷物だね。なに買ったの?」

「げっ……」

 身に覚えのないその段ボール箱を見て、歩はそれがロボットの購入した部品であることを察し、それを二人に見られたことにバツの悪い顔を浮かべた。

 二人は真理の贔屓の客であり、特に赤羽の方は彼女が歩を生む前からの知り合いである。

 歩にスカイラインを譲ったのも彼であった。

「なんだ、エロいのか?」

「ち、違うよ!」

 歩の反応を見た赤羽が揶揄う。

 歩は突然の下ネタに狼狽しながら否定すると、その様子を見て赤羽はガハハと笑った。

「流石にこの量は違いますよヨウさん」

「まぁなんでもいいか。腹減ってるだろう? 弁当買ってきたぞ」

「今日は吉兵衛ロースかつ弁当だよ」

「あざまっす」

 赤羽は歩の頭をワシワシと撫で、ダイニングへ移動した。歩もそれについていく。

 安達親子はかねてから赤羽に世話になっていたため、このようなイベントは頻繁にあった。

 と言うのも真理は元々地方の生まれであるのだが、家族の反対を押し切って当時の男と上京したものの、彼女は妊娠をきっかけに男に有り金ともども逃げられている。

 そして生まれたばかりの歩を抱えて歌舞伎町で途方に暮れていたところを赤羽に保護されたのだ。

 以来赤羽は何かにつけて安達親子の様子を見に訪ね、家族同然の関係となっているのだった。

 最近になり、赤羽の部下となった桐谷もこれに加わり、安達家はその成り立ちは散々であったが現在は和気藹々とした家庭を営んでいたのである。

「クルマ、どっかぶつけたのか? 派手に凹んでるじゃねえか」

「あっ、うん……。ごめん。折角譲ってくれたのに」

 弁当を半分ほど食べ進めた辺りで、赤羽が切り出した。歩は赤羽があの車を大事にしていたのは知っていたので、申し訳なさそうに謝った。

「人にぶつけたのか? ん?」

「いや、それはして、ない……」

 この手の話の時の赤羽が歩は苦手だった。

 落ち着いた声でジッと歩を見つめながら淡々と話を聞く。

 赤羽は昨晩真理から届いた連絡の真偽を確かめたかった。

 真理はあのあと真っ先に赤羽に連絡をしたのだが、その余りの内容の荒唐無稽さに、赤羽は真理が泥酔しているのか、それとも悪い客に違法薬物でも盛られたのかと訝しんだ。

 そのため、歩にその真偽を確かめたかったのだ。

 しかし赤羽の誤算は歩が自身の出すプレッシャーに弱く、彼に嘘を吐かせてしまったことであった。

 歩はロボットを轢いてしまったことに対して嘘を吐いてしまった。

 厳密には人ではないのだから嘘は吐いていないのではあるが、歩は言葉を詰まらせながらそう答えた。

 その仕草の違和感に赤羽は眉をピクリと動かせた。

「ならガードレールにでもぶつけたのか? まぁ昨日は大変だったからな」

 取り調べのような重い空気に変わり始めたのを察した桐谷が割って入った。

「事故起こしたって、どの辺り? 一応交通課に」

「いーからいーから! お前は黙っとけ」

「えっと、明治通りの辺りで」

 このやり取りは、赤羽は真に歩の身を案じての行いであった。

 歩は高校三年で、受験生である。

 高校三年の夏のこの時期に、本人が運転する車で交通事故なんて、受験に影響が出るに決まっている。

 人や人のものに被害が出ていないのなら自分の手で揉み消してやろうと赤羽は考えていた。

 桐谷も赤羽との付き合いはまだ一年そこそこであったが、彼がそう言う類いの人間であることは最近になってなんとなくわかり始めていた。

 しかし警察組織を軽んじる彼のその姿勢は警視庁内部で敵を作りやすい。

 そのため桐谷は逆に赤羽自身を案じて二人の話に割って入ったのだ。

「ヨウさん、しかしですね」

「誰もケガさせてないんだな?」

「……うん」

 桐谷の静止を無視して話を続ける赤羽。

 歩は彼に気圧されながら頷いた。

「ならこっちでなんとかしといてやる」

「ヨウさん」

 聞きたいことが聞けた赤羽は圧を解き、煙草に火を点けた。

 桐谷が窘めながら換気扇を入れる。

 取り調べのような雰囲気から解放され、歩は胸を撫で下ろした。

「真理が呼びつけたのはそんなところだろ? やれ変なことばっかり並べやがってヤクでも盛られたのかと思っちまったよ」

 赤羽の思惑を理解した歩は彼に伝わってないことを心の中で真理に毒づいた。

「免許取ったばっかの頃なんてそんなもんだ。まぁ食え食え」

 赤羽はガハハと笑いながら、歩の肩をバンバンと叩く。

 豪放磊落な彼の気質から来るその仕草は、歩を安心させた。

「……ありがと」

 自分の父がまともだったら、こんな感じだったのだろうかと、歩は嬉しくもあり、そして少し寂しく思った。


「しかし、昨日は大変だったそうだな」

 三人が弁当を食べ終え、麦茶で一服していると赤羽が昨晩の話を切り出した。

「真理ちゃんはヤクザじゃなくてマフィアが暴れてたって。結局なんだったの、アレ?」

「ニュースで流れてる程度のことくらいしかまだわからん。これから捜査本部が立ち上がるが、しばらくは進展がないだろうな」

 お茶請けの漬物を齧りながら、赤羽はめんどくさそうに答えた。

 歩としては、自分の部屋にその騒動の中心人物かもしれないものがいるのだから気が気ではなかった。

 なぜあの騒動が、何の目的で起こされたのか。

 そしてあのロボットはなぜ追われているのか歩は知りたかった。

「犯人は捕まったんじゃないの?」

「あんなん、ただの鉄砲玉だ。なんも知らねぇよ」

「じゃあどうすんのさ?」

「なんだ、警察に入るのは諦めたんじゃなかったのか?」

 赤羽は中年臭く含んだ麦茶で口内を濯ぎ、そのまま飲み込んだ。

 歩がこのように事件の話に首を突っ込むのはここ数年無かったし、むしろ詰まらなさそうに聞くことの方が多かった。

 赤羽は不思議に思い、彼を揶揄った。

「その話はすんなよ」

 赤羽の揶揄いに、歩は顔を真っ赤にして反応する。

「ヨウさん」

「おおっ、悪いな。そんなに怒るなよ」

 歩のいわゆる“地雷ワード”を踏んでしまい、赤羽はホールドアップのポーズをして謝る。

 ただの冗談にムキになってしまった自分にも腹が立ち、我に返った歩は肘をついてそっぽを向いた。

「……ヨウさんも真理ちゃんを説得してくれよ。俺に医者になるなんて無理だよ。なるつもりもないし」

 小学生にもあがる前の頃、歩は警察官を夢見ていた。

 それは紛れもなく赤羽の影響が大きかった。

 しかし高校二年の進路相談で、高校中退の真理のコンプレックスが爆発する。

 当時の歩と真理は、それは大喧嘩を繰り広げたものだが、赤羽の仲裁も入り、現在に至るのである。

「まぁ、苦労してきた真理を見てきてるからなぁ」

 またその話かと、赤羽は困ったように頭を掻いた。

「苦労ってなんだよ。自業自得だろ」

 歩は真理自身が味わった苦労苦悩苦痛の解消に、自分を巻き込むのは違うのではないかと考えていた。

 赤羽は歩の、歩の立場上言ってはいけないその一言に冷ややかに反論する。

「その自業自得に食わせてもらってる小僧が、そういうことを言うもんじゃない」

「ヨウさん!」

「あっそ! 弁当、御馳走様。仕事忙しいんだろ? ここでサボってる場合じゃなくね?」

「歩くん!」

 桐谷が割って入ろうとしたがすでに遅く、売り言葉に買い言葉の応酬により、赤羽と歩は一触即発となった。

「荷物受け取り、ありがとう。それじゃ」

 ヒリついたその空気に根負けした歩は空の弁当容器を流しに置き、そのままダイニングを後にした。

「……しまった。言い過ぎちまった」

 ピシャリとダイニングまで響くほどの音を立てて歩が自室の部屋の戸を閉めた音を聞き、赤羽は失敗したと舌を出しておどけた。

「はぁー……」

 そんな彼の姿を見て、どっちも子供だと桐谷も長い溜息を漏らすのだった。


 赤羽たちが家を出てからしばらく、歩はロボットの指示で組み立てを行っていた。

エアコンの涼味が寒気に変わり、時計を見ると夕方になっていた。

「……あー」

 赤羽の言葉に据えかねていた腹も幾分か落ち着き、改めて自分が絶好のチャンスを逃してしまったと、歩は頭を抱えて項垂れた。

「ドウシマシタカ?」

「なんでちゃんとお前のこと話さなかったのかなぁってさ」

 抑揚の狂った人工音声で尋ねるロボットに、歩は恨めしそうに答えた。

 ロボットの購入した部品は自身を修理するためものではなく、ロボット自身がその身体を修理するための作業用ロボットであった。

 その作業用ロボットの全高は40センチほどと元のボディーと比べると小柄だが、脚部に取り付けたホイールでチョロチョロと部屋内を移動する姿を見て、歩は小学生の頃に死んでしまった飼い犬のタロを思い出させた。

「ドウシテデスカ?」

「わかんねぇから悩んでんの」

 作業用ロボットが組み上がると、次に同じく購入した使い捨てスマホを取り出し、それに取り付けると、スマホとロボット本体をUSB接続する。

 しばらくするとロボットの電源が落ち、代わりにスマホからそれの声が聞こえた。

「アリガトウゴザイマス。シカシ、私ハ助カリマシタ」

 ロボットは電源の落ちた自身の前の身体をUFOキャッチャーのアームのような二指型のロボットアームで起用に持ち上げるとローテーブルの上に寝かせた。

「なんで?」

「私ニモ、私ノ都合ガアルノデス」

 破損部分を確認すると、ドライバーを器用に扱いながら、解体を進めていく。

 その姿を眺めながら、その要領を得ない含みを持たせた回答に歩はおもしろくない顔を浮かべた。

「人間みたいなこと言って偉そうに」

「偉イデスヨ、私ハ」

「あーそうですかー」

 ロボットの受け答えに皮肉った返しをする。

 歩はいつしか自分がロボットを人間と同様にコミュニケーションが取れる意思のある存在として扱うようになっていた。

「で、そのえらーいロボットさんはなんで歌舞伎町なんかで追われてたワケ?」

 いつの間にか開いていたドアに、キャミソールとホットパンツ姿の真理が寄りかかっていた。

 水分補給代わりの缶ビールを携えて。

「ってか、なにコイツ? 増えてんじゃん」

 真理は飲みかけの缶ビールで作業用ロボットを指す。

 状況は進展してないどころか悪化していそうな上に、半ば打ち解けかけている息子たちの様子がまた彼女の不興を買った。

「修理するためのロボットだってさ。いまはコッチに入ってる」

 歓迎されていない空気を察したロボットは、一瞥代わりに真理の顔を見つめ、すぐに振り返り作業に戻った。

 その態度が余計に真理は癪に障った。

 真理はホットパンツのポケットから煙草と携帯灰皿を取り出し、歩たちの近くに座るとビールを呷った。

「金は?」

「コイツが払った」

 気怠そうにライターを擦りながら、真理は歩に訪ねながら金の出所を考えていた。

 ロボットの口車に乗って買わされるほど自分の息子はアホではないはずだが、いったいこのロボットはどこから湧いてきたのかと思案していると予想外な回答が返ってきた。

 思わず親指に力が入ってしまい、勢いよく火が点く。

「マジ!? アンタお金持ってんの!?」

「ソレホド多クハアリマセンガ」

 身を乗り出して真理はロボットに問い質す。

 ロボットは漸く真理が自分をある程度認めたことを認識し、作業を中断して真理に向き直り答えた。

 真理は歩を手招きし、耳打ちする。

「アンタ見たんでしょ? いくらあった?」

「ゼロが6つあった。それもドルで」

 釣られて歩も小声で真理に耳打ちする。

「ドル!?」

 更なる予想外の言葉に真理は驚き、目を丸くした。

「必要ナ部品ノ調達ガ終ワリマシタラ、オ礼ハサセテイタダキマス」

「と、当然じゃない? ま、まぁ? 乗り掛かった舟だから? ゆっくりしてきな」

 アームを床に着き、それをつっかえ棒に上体を前傾させ、あたかも三つ指をついたようなポーズをしてロボットは真理に懇願する。

 突然の殊勝な態度と金の匂いに毒気を抜かれた真理は声を上擦らせながらしどろもどろと承諾するのだった。

「金があるとわかった途端これだよ」

 わが親ながら金に汚い様であると恥ずかしそうに歩は頭を振った。

「うっさい。それよりアンタ、なんでヨウさんにちゃんと話しておかなかったの?」

 自分の態度にうんざりしている歩を真理はピシャリと切り捨て、話題を切り替えた。

 真理も歩と同様、先ほどのタイミングがこのロボットを厄介払い出来る絶好のチャンスだと考えていた。

「だって……」

「だってじゃないし」

 情けなく言い訳を始めそうになった歩を、再び真理は切り捨てる。

「言いそびれたんだよ。それに真理ちゃんが考えたことだろ。自分でやれよ」

「はぁ? 面倒ごとを起こしたのはアンタでしょ? 自分のケツは自分で拭きな」

 歩の言葉に真理はカチンときて、口喧嘩に発展しようとしたところを、ロボットが止めた。

「喧嘩ハ、止メマショウ。不毛デス」

 ロボットの言葉に、バカバカしくなった二人はふんっとそっぽを向いて座り直した。

「で、頭が良くて偉いロボットさんはなんで追われて誰に追われてんのさ?」

 煙草の吸殻を携帯灰皿に押し込み、真理はロボットに訊ねる。

 ロボットは一寸、歩と真理の顔を見て、上体ごと頷いた。

「ワカリマシタ。ナルベク簡単ニオ話シシマス」

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